第15話 生活スペースを確保せよ

 異世界から転移してきた少女、ルンシール・ブロンズ。


 この少女はオレの私用車である軽トラの助手席に直接転移していてきたこともあってか、軽トラから5メートル以上離れると死んでしまうらしいのだ。


 この少女、ルンと一緒に駐在所で生活せざるを得なくなったオレは、ルンの居住環境について頭を悩ませていた。


 先ほど、トイレ問題を解決した際には、駐在所の居住スペースの玄関に横づけすることによって、居住部分のトイレの場所は5メートル以内に収まりどうにかなった。

 ただ、トイレはどうにかなっても、実際に住むとなると色々な問題が出てくる。


 トイレ以外で一番の懸念となるのは寝起きする場所。


 居住スペースのトイレの前は廊下。

 

 寝室となる各部屋はそのはじっこ数十センチ部分しか5メートルの範囲内に収まらない。


 このままではトイレ前の廊下で寝泊まりせざるを得ないのだ。




「うーん、このままだとプライバシーもへったくれもないんだよなー」


 男同士ならば、廊下での寝泊まりもなんとかなるかもしれない。

 だが、相手はうら若き少女であり、我が署の幹部やら、お国のお偉いさん方もなにやら関わってると思われる超VIPなのだ。


 そんなルンを、仕切りも扉も、冷暖房も何もない、しかもトイレの前の廊下で生活させるわけにはいかないだろう。


「これは、執務室の方がいいのかもしれん。」


 普段、制服を来てデスクワークを行う公的な場所である執務室。

 

 そこに隣接するパトカーの車庫に軽トラを入れれば、執務室内に5メートル範囲内のそれなりのスペースは確保できそうだ。

 それに、駐在所内のトイレもどうにか範囲内だ。

 

 本来は、パトカーを入れておく駐在所の車庫。有事の際にはすぐに出動できるよう、車庫の入口と執務室はドア1枚で繋がっているのだ。

 

 そこに私用車の軽トラを停めるというのは本来ならば公私混同であり、マスコミからのバッシング案件にもなるのだが、今の軽トラは公用車扱いで覆面パトカー用のパトランプも設置可能だ。これならパトランプをのっけた状態であれば大丈夫だろう。

 

 だが、いくらスペースが確保できるといっても、やはりそこは執務室。


 オレも日中はそこにいるし、いつ何時お客様やら、取り調べ等の業務で連行してくる輩とかが出入りするか分からないのだ。

 まあ、基本ヒマな駐在所なので来客などはめったにいないのだが。


 それでも、公共のスペースで、いかに特別公務員扱いの交通指導員と言えども毎日寝泊まりするのはアレだし、何よりプライバシーの問題は解決できていない。


 さて、どうするべきかと考えていると、暇なはずの駐在所にトラックが3台ほど入ってきた。



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