第13話 特例措置
愛車の軽トラが警察仕様にカスタマイズされていく様を見て呆然としているオレの横では、今日からオレの駐在所に着任するという緒方巡査が、
「ルンちゃんと一緒に暮らせますぅ!」
と喜びを隠しもしないで飛び跳ねていた。
そこに、すすっと横にきてオレに耳打ちしてくれた地域係長の話の内容に、オレはさらに混乱した。
係長の話によると、世界中でダンジョン発生騒ぎが起きている中、異世界から来たと思われるこの少女は何かしらの関連がある可能性が高い。
本来は国で保護したいが、軽トラから離れられないという制約があり、ならばせめて目の届くところでということで、地方公務員であり警察官でもあり、軽トラの持ち主でもあるオレに白羽の矢が立てられた。
彼女の立場、収入等への配慮、オレと共に行動せざるを得ないという事を鑑みて、特例で交通指導員という職と立場を用意した。
本当は警察官にしたかったようなのだが、こんな若い警察官は存在しない。
本来20歳以上でなければ交通指導員でも委嘱できないはずだが、そこは本人の年齢を仮に16歳として、特例としてごり押ししたそうだ。
彼女の立ち位置は無国籍者となり、未成年と類推されるため市町村による生活保護は適用が難しく、同様に仮に本来の14歳で通しても義務教育(教育扶助)も難しく、このような特例となったらしい。
なお、この特例には当然、県警だけでなく県庁や市役所、さらには国のトップ機関である警察庁やら、内閣府やら、外務省やら厚労省やらといった機関が関わっており、その扱いはトップシークレットとされているそうだ。
そんなトップシークレットの存在を市井の前で交通指導させてもいいのかという疑問が頭をよぎるが、超法規的存在と化した彼女に関する処遇にいち巡査ごときが異議を唱えることなどかなうまい。
もしかして、国とかには何か目論見があるのではないだろうか。そうでもなければ、それだけの省庁を横断しての即断即決などできるわけがないと思うのだ。
そんなことを脳内で巡らせていると、車庫の軽トラのとなりに設置されていたテントから白衣の医師と看護師が出てきた。
さっき倒れたことを鑑みての健康診断だろうか。あるいは、異世界からの未知の伝染病とか細菌とか持っていないかの検査かもしれない。いずれにせよ、本来は大学病院とか研究機関で行いたいはずだと思うが、軽トラの制約でこんなテントになっているんだな。
医師がオレの方を見て話かけてくる。
「とりあえず、次は3日後。もしそれまでに何か異常があったらここに連絡するように」
と、名刺を手渡される。げ、大学病院の教授様じゃないか。
驚きと混乱がないまぜになったオレに、ルンシールさんが話しかけてきた。
「そろそろ帰りましょ、晴臣おにいちゃん!」
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