第12話 交通指導隊員拝命
――交通指導隊とは。
警察官と同じような制服を身に着けて、保育園や小中学校の通学路などで交通指導をしている方々を見たことはないだろうか。
あの方たちは警察官ではなく、都道府県や市町村から委嘱を受けて業務に付く、非常勤の特別職地方公務員という立場になる。
その制服もよく見れば警察官のそれとは腕に付いているワッペンが違うのがわかるだろう。
活動時には一定の時給が支払われるが、当然フルタイムの仕事ではないためそれのみで生計を立てるのは不可能であり、多くの場合は定年を迎えた方とか家庭の専業主婦の方とかがボランティア的な活動として携わっているケースが多いだろう。
で、なんでルンシールさんがその制服を着ているのだろう?
たしか、交通指導隊はおおむね20歳から70歳までという年齢制限もあったはずだが、いかにも中学生のような――、後で聞いたら14歳だという彼女が就けるものではないはずだ。
というか、彼女は異世界からの転移者なのだ。当然、日本国籍など持ってはいない。そのへんはいったいどうなっているのだろう?
オレがそんな懐疑的な表情をしているのを見て取った刑事課長がこう告げる。
「本当はこの本署か、俺の官舎で面倒を見たかったのだが、軽トラからも離れられないし、なにより本人の希望だ。武藤巡査長、君はこれから彼女を保護し、生活の便宜を図れ。あと、男性と女性が1対1では世間の目もあるので、今日付けで緒方巡査が上中岡駐在所に配属になる。軽トラから離れられない彼女の生活には困難が伴うかもしれないが、協力してうまくやってくれたまえ。くれぐれも、ルンちゃんの出自が市井やマスコミにバレないように。あ、あと、俺はちょくちょくルンちゃんの様子を見に遊び行くからそのつもりで。」
はあ? いろいろ理解が追い付かないんだが? ルンちゃん? なんだこのキモイ爺さんはゲフンゲフン。
「で、見ての通り彼女は非常勤の交通指導員になってもらう。武藤巡査長の軽トラは、業務中は本署で借り上げるという形をとるので、業務の際は必ずルンちゃんと同行すること。多く稼働すればその分だけ、ルンちゃんの時給が増えて、ルンちゃんがたくさんおいしいものとか、かわいいお洋服とか買えるんだからな。」
どうしよう、説明を受ければ受けるほど理解が出来なくなってくる。
ふと視線をオレの軽トラに移せば、覆面パトカー用の赤色灯とサイレンのユニットがいつの間にか取り付けられている! 車外マイクや県内系無線まで! オレの愛車が警察仕様にカスタマイズされてしまった……!
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