第9話 生命維持装置軽トラ
興奮した緒方巡査の横やりでなかなか検証が進まないのだが、異世界少女と思われるルンシールさんはオレの言葉にうなずきを返しているのでまあ、同意しているということで話を進めて行こう。
「で、さっき倒れたときはどんな感じだったのですか?」
「えっと……、なんか、その
「という事はですよ! あっちの世界からこっちの世界に来た時に現れたのが軽トラの中という事も鑑みて、たぶん、その軽トラは触媒というか、依り代というか、ルンさんがこっちの世界で生きるための生命維持装置というか、そんな役割を果たしているんじゃないでしょうか! あ、それなら、軽トラから離れた時に急に言葉がわからなくなったのも説明が付きます! 言語翻訳も、維持装置である軽トラの側でしか働かないのであれば辻褄も合います!」
緒方巡査、適当な思い付きの長ゼリフ考察をありがとう。それにしても『ルンさん』って、捜査対象なのか保護対象なんかまだ判別はつかないが、いずれにせよ業務の対象者に対していきなり愛称で呼ぶのはいかがなものか? まあ、呼びやすいのは確かだが。
「で、その考察が正しいとすれば、ルンシールさんはこの軽トラの側から離れられないという事になるな。うーん、それは不自由だな。トイレとか風呂とかどうすんだろ……」
「武藤巡査長! でりかしいがないです!」
おっと、後半部分の独り言のつぶやきを聞かれてしまったようだ。
ふとルンシールさんに視線を移すと、なにやらもぞもぞしてそわそわしている。この動きには見覚えがあるぞ。
「トイレですか?」
「武藤巡査長! でりかしい!」
また怒られた。でも、ルンシールは恥ずかしそうにもじもじしているから多分正解だ。
どうしようか。とりあえず思いついたこととして、軽トラを駐在所の居住部分玄関ぎりぎりに寄せた。そこからの方が、駐在所の業務部分のトイレよりも外との距離が近い。
そこから、玄関のカギをあけ、武藤巡査に付き添ってもらってトイレに誘導してもらう。オレは何も見ていない。うん。
数分後、スッキリとした表情のルンシールさんと武藤巡査が戻ってきたので、多分無事用を足せたのだろう。武藤巡査までスッキリしているのはよくわからないが。
「軽トラから、何メートルまで離れられるのかの検証も必要だな」
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