第5話 応援依頼
なぜかオレの軽トラの助手席に乗っていた、冒険者だと名乗る不思議な少女。
警察目線で見れば、不審者であることに疑いようはないのだが、そのアニメの中なら出てきたような服装と顔立ちにオレは混乱していた。
ここは、もっと細かく深い所まで話を聞かなければならない。幸い駐在所の敷地内だ。このまま駐在所の中に任意同行したいところだが、とある懸念が持ち上がる。
相手は年端も行かない少女、片やこちらは青年真っ盛り。いくらオレが警察官だといっても、1対1での応対はまずい。下手すれば淫行警察官だという不名誉な風評が立ちかねない。
ここは女性警察官の応援を仰ぐべきだろう。
「上中岡移動から丸舘地域。」
オレは署内系無線機で、本署の地域課に呼びかける。
「――丸舘地域、どうぞ。」
地域課の署員、たぶん地域係長が無線に応対してくる。
「――現在駐在所敷地内。本職の
「――案件了解。状況及び
「――了解。本職、本署に向かおうと私用車に向かったところ、該当の少女が助手席に座っていた状況――って、あれ?」
オレは、ここで強烈な違和感に気付いた。
「――どうした、どうぞ」
「――えー、失礼。該当の少女は、開錠する前の軽トラの助手席に座ってました! 先日施錠は確認しておりますので間違いありません! 該当少女は、施錠された軽トラに何らかの方法で乗車したと推測されます! どうぞ!」
ここで、無線機の向こうでなにやら小声のやり取りと雑音が入る。
「――えー、刑事課、
「――そのとおり。どうぞ」
「了解。現在全国的に不可解な事案と、所轄内での不可解な失踪事件が発生している。何らかの関与の可能性あり。立て込んでいて応援は出せないが、どうにか
「――了解。引き続き人着送る。皮革製の女性用下着――ビスチェのような上衣、内側に麻素材と思われる服で袖なし、肩露出。下は同様に皮革製の短めのスカート、内側に素材不明のスパッツ様の膝上丈のズボン。靴も皮革製の編み上げ靴。素材不明の、魔法使いの杖のような棒持参。人相は――日本人とは違うようでアニメ顔。なお、本人は自分の事を『冒険者』であると呼称。どうぞ」
「—―……えー、魔法使いとアニメ顔、冒険者については真面目な話か? どうぞ」
「そのとおり! どうぞ!」
やっべ、ぜったいオレって頭おかし奴だと思われてるなこれ。
「――……俺が応援に行きたいところだが……無理だな……了解……」
あれ? なんか刑事課長残念そうな……もしかして、課長ってアニメ好きなのかな?
「――駅前移動より丸舘地域! 上中岡移動!」
おっと、なにやら元気な女性の声が無線に入り込んできたぞ。
「本職、当該冒険者の案件、応援に向かいます! どうぞ!」
どうやら、駅前交番の女性警察官が応援に来てくれるようだ。だが、なぜに食い気味なのだろう……?
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