第6話 異世界からきた少女

 さて、なんとか現状の報告と応援の依頼はできた。


 応援に来てくれるのは、丸舘駅前交番に勤務する女性警察官、緒方志穂美巡査だ。

 

 彼女はオレの2期下で、高卒だったからまだ20歳そこそこなはずだ。

  

 若い娘と話が出来るのはうれしいと思わないではないが、正直気後れするといった方が本音である。

 オレは、こんな30歳前の私服もろくに持たない男が女性に相手にされるわけがないという強い信念? を持っているのだ。


 まあ、それはそれとして、彼女が応援に来るまである程度の事を聴取しておかなければ。


「ああ、ごめんなさい。お話の途中でしたね。それで、あなたは気が付いたらその車の中にいたという事でしたね?」


 そう話しかけるも、自称冒険者の少女はオレの腰にある無線機を凝視している。


「無線機がどうかしましたか?」


「……すっごーい! ねえねえ! それって離れたところと話が出来る魔道具だよね! あのアキン・ドーが使っていたって物語に出てくるやつ! じゃあ、あなたは異世界から来たの?」


「……はい? 異世界?」


「そう! 異世界! あなた、アキン・ドーって知ってる!? 異世界から来たって言う、建国の英雄だよ!」


 なんとなく……つながった気がした。

 

 目の前にいる、よくわからないことをしゃべる少女。

 

 そう、この少女が、異世界から来たと仮定すれば、すべての謎は解けてしまうのではないか。


「えーと、私は、あきんどう? という人は良くわかりませんが、もう一回質問させてください。あなたは、気が付いたらそこにいたんですね? 、そこにいたんですね。」


「えっと、たぶん、そうだと思う……思います。」 


「で、あなたは冒険者で、討伐の依頼中に突然不思議な光に包まれたところまでの記憶はあると」


「はい……」


「で、気が付いたら、そこにいたと」


「はい」


 これは……間違いないのかな?


「えっと、たぶん、というか、本職の推測ですが、だと思われますよ?」


 軽トラのドアのカギを開けずに中に乗り込むことは不可能だ。ということは、おそらくこの自称冒険者の少女は、軽トラの助手席に直接、異世界から転移してきたのではないか。

 

「へっ……? わたしが? ここって異世界?! うっそーーーーー!!!」


 少女がそう叫んだところに、パトカーが1台現れる。駅前交番からの応援、女性警察官の緒方巡査だろう。

 おいおい、追跡時でもないのにパトランプ点灯させちゃってるよ。よっぽど急いできたんだな。まあ、サイレン鳴らしてないだけいいのかな?


「お疲れ様です! 駅前交番巡査、緒方志穂美巡査です! 応援に参りました!」


「お疲れ様です。上中岡駐在勤務、武藤巡査長です。応援感謝します。」


「わ~~~! この娘ですね! 冒険者の少女って! うわ~~~! すっごーい! かわい~~!! ほんとに皮鎧着てるう~! アニメ顔~~!!」


「……あ、あの、緒方巡査?」




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