第19話 作戦会議

  「ティファニー、この件はノアの俺たちに任せてよ。ティファニーのお陰で良い考えが浮かんだから、」翔が自信満々に言った。

「あら、男らしいじゃない、それほど言うんなら わかったわ、任せるわ。でも失敗は許されないわよ。」

「翔、大丈夫なの?」とオーナーも聞いた。

「はい、5人の精鋭でやります。」

「精鋭…って、誰?」ホスト達は互いに顔を見合わせて 首を傾げている。

「タカとリョウとケンと俺と…肇、」

「えっ?僕? はい、」皆、割とガタイが良くて顔だちもシャープなイケメン。

チョット強面な雰囲気も持っている。

「肇はその男と図書館で会っているんだよな、顔は分かるよな。」

「はい、」 肇は男の確認の為に選ばれたようだ。

「ところで肇、図書館で何してた?」

「あっ… ちょっと調べたいことがあって……」

「ふーん、まあ、愛美ちゃんが助かったんだから 感謝しなきゃな。」

不動産の勉強をしていたとは とても言えない。

「はい、じゃあ、これで終わり、」オーナーが区切りをつけた。

「翔、後で私の部屋に来て、詳しい話を聞かせてちょうだい。」

「はい、分かりました。」

 翌朝、みんなが朝食を食べ終わると 翔が4人を集めて打ち合わせを始めた。

「みんな、今日、俺たちは組の者だ。」

「組?なんの組?」チョット鈍いリョウが言った。

「組っていえばヤクザだよー、何言っているんだ。」とタカ

「あー、ヤクザ……えー何で、」

「バカ、あいつを脅す為に決まってるじゃないか、」とケンが呆れて言うと、翔は

「真紀ちゃんは 親分の女になったことにする。下手に手をだすと とんでもない事になると、あいつに思わせるんだよ。」と言った。

「なるほど、いいかも、」

「だから、みんなチョット悪そうなカッコしてくれ、それとサングラスを持っているよな?」

「あのー、僕持ってないです。悪そうな服もないです。」と肇が言うと翔は

「俺のを貸してやる。」と即座に言った。

「2時には ここを出るから、皆、頼むな!」

「はい、」 そこにティファニーがやって来て、

「私、これから離婚届を取りに役所に行って来るわ。私も何か協力したいから、」

「ありがとう、ティファニー、」

いつもまとまりのない連中に見えるのに、問題に対しては団結して取り組んでいる。良い関係だなと肇は思った。翔も何だか優しくなったし、このままここでホストの

仕事をするのも悪くないと思い始めていた。

「5分前集合でいいな? じゃあ、解散! 肇、俺の部屋に来てくれ、服とサングラスを貸すから、」

「はい、ありがとうございます。」

翔の部屋は肇と同じフロアーで エレベーターホールの近くにあった。

「ちょっと、待っててくれ。」翔は肇をドアの所に待たせ、クローゼットを開いて

黒いシャツをハンガーから外していた。

「パンツのサイズは違うようだから 自分のをはいてくれ、グレーのパンツを持ってたよな。」

「はい、」  

「じゃあ、それで良いと思う。それとシャツのボタンを第3まで外してこれを付けて、」と、太いチェーンの金色のネックレスを サングラスと黒シャツと共に

渡してくれた。なるほど、いかにもの感じになる。

「じゃあ、2時5分前集合だからな。」

「はい、分かりました。」自分の部屋に帰りかけた肇は急に立ち止まって、再び翔に向かって 「翔さん、僕、頑張ります!」 「ㇷ゚ッ!」あまりにも真面目に肇が言うので翔は思わず吹き出しそうになった。

「ああ、頑張ってくれ!」 「はい!」 嬉しそうに肇は自分の部屋に歩いて行った

「あいつ……なんか面白い奴だな……」翔は肇の後ろ姿を見送りながら思った。

  2時5分前になると、寮のエントランスに精鋭5人が集合した。

なかなか近づき難い雰囲気を醸し出している。季節は12月に入っているのでシャツだけでは寒い。みんなコートを肩に掛けている。だから、益々大きく強面に見える。

肇も旅行業の時に着ていたトレンチコートを肩に掛けた。サングラスも掛けると充分

怖い人に見える。

「じゃあ、みんな、学校に行くぞ!」と翔、まるで殴り込みだ。

「これで5人が並んで歩いたら 目立ち過ぎませんか?」と心配になった肇が言った

「そうだな、3人くらいでいいか、リョウとケンは高木を連れていく公園に 先に行って待っててくれ。」

「はい、分かりました。」リョウもケンも歳は翔より上なのだが、ホスト歴は翔より少なく、ナンバーワンの翔には敬語を使う。

「高木って、あいつは高木と言うんですか……」肇はそう言えば名前を知らなかったと、改めて思った。

三人になったが やはり大通りを歩くと目立つと思い翔に提案した。

「翔さん、愛美ちゃんに教えてもらった近道があるんですが そちらを通りませんか?目立たないと思うし……」と肇が言うと

「うん、案内してくれ、」翔も即座に答えた。やはり、同じ思いだったようだ。

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