第8話 宰相
僕はアイリスの部屋でお世話になることになった。アイリスの部屋は大きかったが、部屋の広さの割には質素で豪華さは無かった。
「アイリスのお父さんって何やってる人なの?」
「宰相。実質、この国を運営しているのは宰相のお父さん。この国での王は肩書みたいなものだから」
アイリスの話を聞いて、兵士のアイリスに対応に何となく腑に落ちた気がした。
「宰相の娘なのに冒険者をやっているのは好きでやっているの?よく許してくれたね」
「騎士団や街での仕事を認めてくれないの。お父さん的には国の外で仕事をして街の人達に迷惑をかけない冒険者をぎりぎり許してくれた感じ」
自分よりも仕事もとい生き方の選択肢が少ないアイリスにいたたまれなさを感じた。
「この世界では魔法を使えることはかなり珍しいの。だからわざわざ居心地の悪い環境にいるよりかは冒険者をやって、自分にしかない可能性を見つけようと思ったの」
自分の意思で冒険者を始めたのは同じだが、少ないとはいえ、選択肢があった僕と彼女では冒険者という仕事に対する気持ちは雲泥の差だろうし、彼女の僕に対する今までの対応にも納得がいった。
「お父さんが他の事をやらせてくれないのは面子的な奴なの?」
「仮にお父さんが許しても国の人たちは許してくれないでしょうね」
「それって宰相の娘だから?」
「私が魔法を使える人間だからよ」
「珍しいから差別されてるって事?」
「……50年くらい前までは魔法を使える人間が魔法を使えない人間を差別してたから立場が逆転したのかもね。昔は魔法を使える人間が今よりも多かったんだけど、今は何故かごく少数の人しか使えない」
「魔法を使える人間が沢山殺されたとか?」
「文献には50年前のある日突然魔法が使えなくなったと書いてある。魔法が使えるのは魔法が使えなくなった日から産まれた私たちのような人間って考えが有力なのよ」
「・・・・・・」
「ちなみに今私が話は話してる内容は、この国の人間なら誰でも知ってることよ。あなたもこの国で生きていくなら知っていても損はないと思う」
アイリスはそう言いながら自分の書棚に向かい一冊の本を持ってきた。アイリスが持ってきた本には「孤独な魔女」というタイトルが書かれていた。
「誰が書いたかは分からないけど、読みやすいと思う」
僕はアイリスから手渡された「孤独の魔女」という本のページを開いた。
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