第6話 王宮
僕は今までのアイリスとの会話でアイリスがどこにいこうとしているのか何となく察しが付いていたかも知れない。
「家ってもしかしてあの城のこと?」
「そうですね。まあ、この国の出身じゃなくても私と接してたらいつか気づいてたと思いますけど」
「いや気づいたのはさっきで確信は無かったんだけど、それより行かない方が良いんじゃ…城なら警備とかしっかりしてるのでは?」
「自分の家が燃えてんのに帰らない家主がどこにいるんですか?それに今は城の警備が手薄になってるんです」
「でもアイリスは王女でいいんだよね?それならここにいた方が安全じゃない?」
「王女がこんな所で冒険者なんかしないですよ。私の家だから帰るんです」
そう言ってアイリスは城もとい、家に帰る為に足早に街の方に走って行った。僕はアイリスのあとについて行った。
「ちょっと何でついて来るんですか?」
「君だけだと危険だと思って」
「部外者のあなたを連れてきた方が危険だと思うんですが」
口ではそうは言うものの僕を拒絶しようとはしない。走り続けたせいか国の反対側にある城には30分もしないで着いた。冒険者の申請をする為にこの近くには来たので真新しさは特に無かった。城の出入口を警備している兵にアイリスは「同業者なんで」と軽く説明しただけで僕もすんなり城の中に入れた。初めて城の中に入ったが緊迫した空気を感じた。近くにいた兵士がアイリスに気づいた。
「アイリス様、今この城にゴーレムの群れが侵入し、城にいる人員だけで対処している状況です。地下に非難した方がよろしいかと」
「結構です。私も自分にやれることをやります」
アイリスの言葉を聞いた兵士は意外にも止めることなく、自分の持ち場に戻っていった。アイリスの後をついて行って建物の中に入っていくと、いかにも戦闘状態というようなピリピリした空気を感じた。
廊下の先にはテイシャと3Mぐらいの高さのゴーレムと思われる怪物が戦闘状態になっていた。テイシャはゴーレムの攻撃を驚きの身体能力で躱し、ゴーレムに手に持っている剣で反撃をするが、石でできているようなゴーレムには効いていなさそうだった。
「テイシャさん避けて!」
アイリスは杖から出した炎の玉をゴーレムに容赦なく叩きつけた。初めて見た魔法にあっけにとられていた僕は動き出したゴーレムを見て我に返った。どうやらそんなに効いてないらしい。
テイシャはゴーレムから距離を置いて僕とアイリスと合流した。
「まさかとは思ったけど君がアイリス様と仲良くなっているとは」
「この人が勝手に通いて来ただけですから。というかテイシャさんとも会われてたんですね」
思わぬ再会だが、3人はなかなかダメージが与えられないゴーレムから距離を取り拮抗状態を保っていた。2人とも戦闘員としても優秀なのは先のやり取りで分かったが、こちらの攻撃が通じないのであればジリ貧だった。そんな膠着状態の中、ゴーレムの後ろの通路の方からの攻撃なのだろうか、ゴーレムは背後からの何者かの攻撃で真っ二つになりあっさりと倒された。倒れたゴーレムの向こう側に全身を鎧で包んだ誰かが立っていた。
「団長!」
テイシャは全身を鎧で包んだ男に声をかけた。どうやら全身鎧の人物は騎士団の団長らしい。3人は騎士団の団長に近づいた。
「アオイさん挨拶を。こちらの御方はこの国の王です」
アイリスはテイシャが呼んだ肩書とは別の肩書で目の前の人物を紹介した。
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