第22話 気持ちの変化
僕の聡里優実への気持ちの傾きは、一般的に言う恋に似ていた。そうならない様に、そうなっちゃいけないと、自分の心にストップをかけて複雑にしない様にしているのが周りはもどかしいと映るらしく、いろいろ世話を焼いてくる。
自分は普通に恋していいの?これがもっかのところ最大の悩みだった。
「実に仲よさそうだったよ。彼女のために自転車押して歩くなんて、しかも、無愛想な阿弥陀田くんが…これは胸キュンですよ」
「見てたのか?」
「みんな見てたよ、どの組も、窓にしがみついて。泣いてたな~女子。なんでよ~今さら伏兵に持ってかれたって」
「そう」
「あれ、怒んないの?ついに、コンピューターいかれた」
なんだよそれ、それじゃああまりにもこれまでの僕のイメージが悪すぎる。だからと言ってこれが恋だと決めてしまえない。聡里には悪いけど、ごめん僕、恋しちゃいけない気がするんだ。
「期待させて悪いけど、聡里は家族みたいなもんだ。あしからず」
そう言うしかなかった。朝ヶ谷の冷やかしはどうせ単純なもので悪意も勘ぐりも無いだろう。けれど、ここで甘い顔をするとなし崩しに恋人扱いされてしまう。そうなるには心の準備がまだ出来て無かった。
「家族?」
キツネにつままれたような朝ヶ谷の顔。
「そう、家の敷地の中に住んでるっていうか、敷地の中に僕の家があるっていうか、そういう関係。わかる?社宅って言うの、そう言うのに住んでるから」
聡里にも聞こえるように大きめの声で話す。両親がいない話にはしたくなかった。それじゃ広まった時聡里が悲しすぎる。
「シン!」
廊下で冴ちゃんが呼んでいる。
「どうしたの?教室に入って来ないなんて何かあったの?」
「マヤのところにユフから連絡があったって」
冴ちゃんは僕を廊下の隅に引っ張っていって最高機密のように小声でささやいた。
「へ~何て言ってきたの?」
「もう、何でいつもこう温度差があるのよ。もういいやって感じ?僕は彼女出来ちゃったし、みたいな」
僕の間延びした声に冴ちゃんがイラっと顔を曇らせた。
「シ~、シ~、そういうこと軽はずみに言わないで、後で否定するみたいな事嫌だから」
「あら、そうなの?私、邪魔しないよう遠慮してるのに」
「勝手に決め付けていろいろやるなよ。それよりユフにどこで会うの?」
「シンの家にした。あそこが安全」
「わかった」
話が先に進まないのが冴ちゃんの駄目なとこだ。あ、ユフが男か女か聞きそびれた。そんな大事なことが気にならない程、反応が鈍ってきてる。
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