第三章 2
『今日朝7時ごろ、人が血を流して倒れているとの通報があり警察官が駆けつけたところ、近くの学校に通う高校一年生の風島晃さんが血を流して倒れているのを発見し、搬送先の病院で死亡が確認されました。風島さんは腹部を鋭い刃物の様な物で刺されており、警察は殺人事件と見て捜査を続けています』
事件から一日も経たずして風島の事件についてテレビが報道していた。
風島と仲の良かったクラスメイトが数人顔を隠してテレビのインタビューに答えたりもしている。
「晃はみんなから尊敬されている存在で、誰かに反感を買うようなことはしていなかったです。本当にショックです」
「晃は中学生の時は少し荒れている奴でした。だけど高校に上がってからはしっかりと心を入れ替えてもう一度一からやり直す、と言っていたのに…。こんなことになるなんて」
一人の男の子がそんなことを言っていた。
風島の中学生時代の時からの友達なんだろうか。風島が中学の時は荒れていた?まさかあんな真面目な奴がか。
風島を刺した犯人は未だ見つかっていない。動機も分からない。警察も犯人の手がかりが掴めず手こずっていると聞いた。
一体、誰なんだ。
風島の死はクラスの雰囲気を取り乱していた。あんな賑やかだったクラスが一気にシンとしている。
リーダー的存在が失われると人々はこんなにも変化がおきるものなのか。風島の存在はそれだけ大きかったんだ。
神谷も少しは元気を取り戻しすつつあるようだ。顔色も良くなっている。
その日の学校帰り、僕は風島のお墓参りに行った。予め風島の両親に会いに行き、お線香をあげてからいった。
「風島晃」
と書かれたお墓の前に立ち手を合わせた。
「一体誰にやられたんだ…」
そんなことを言っても答えは返ってこない。バカバカしいと感じスっと立ち上がり、その場から離れようとすると見たことのない制服を着た男の子と会った。
「…あ」
「…あ、こんにちは…。もしかして晃の友達ですか?」
「友達というか…まあ、クラスメイトです」
「そうですか…」
その後沈黙が続く。
この人も風島の友達のようだ。どこかで見たことがある。
「あの、もしかて前テレビのインタビューに答えてました?」
「あ、はい」
てことは風島が中学生の時の友達か。
「風島とは小学生の頃からの付き合いでした。高校はお互い違うところに行ったけどよくメールでやり取りしていました。それなのに…どうして」
男の子はしゃがんで花束をお墓において涙を流していた。僕にはどう声をかければいいのかわからない。ただただ男の子のそばにいてあげた。それが僕にとってできる最大限の努力だから。
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