第一章 6
その後もたくさんの話をした。
『こういうことを話したのは久しぶりです。とても楽しかった。本当にありがとうございました』
『いえいえ、お役に立てて光栄です』
その日はそれで終わった。気づくと時計は7時半を回っていた。急いでお風呂に入り、ご飯を温めて食べる。今日はトンカツ。温まったカツを口に放り入れ、雛菊のことを調べる。
しかし、雛菊のことを書いている記事は一つも見当たらない。見つけられないだけなのか、それとも雛菊のことを外に漏らしてはいけないのか。
不思議だらけのサイト、雛菊。その出会いが僕の人生を狂わせるだなんて今の僕は思いもしなかっただろう。
「おはよう、透夜君」
朝の登校中後ろから神谷が走ってきた。
「…おはよう」
「朝から暗いね、どうかしたの?」
学校では話しかけないでほしい、だなんて言えるはずもなく
「別に、何も」
と冷たく返してしまった。それから無言が続いて学校に着いた。着いた瞬間、神谷の元に女子が走ってきた。すぐにその場から離れて昇降口へと向かう。
すると下駄箱の中に早速ゴミやらなんやら、色々なものが入っていた。またあいつらか。懲りない奴らだな。と呆れていると宮下がやってきた。
「俺からのプレゼントだ。ありがたいと思えよ」
「宮下からプレゼントもらえるなんて、光栄に思えよ」
でかい声で笑っている。よくこんなことをしてて飽きないよな。逆にすごい、とたまに感じる。
「おい、なんか言えよ」
「…ありがとうございます」
「ありがとうございます、だってさ!何だこいつ」
なんか言えよ、って言われたから言ったんじゃないか。本当によくわからない。
「お前、後で校舎裏来いよ。もっといいプレゼントやるよ」
めんどくさい。けれど断れない。情けない。
重い足取りで教室へ向かう。誰も挨拶してくれない。いつも通り。いつもと違うのは人々に囲まれた神谷がいること。まだ2日目だというのにもうクラスに馴染んでいる。僕とは大違い。
宮下達も神谷に懐いている。神谷がいる時は一切僕に話しかけたりしない。逆に神谷がいない時は僕に話しかけては暴力を振ったり、物を奪ったり、暴言を吐いたり。その凶変さに驚くこともある。
「じゃあ神谷さんには好きな人とかいないのか?」
「あー、それは内緒よ」
神谷がウインクしながら人差し指を口に当てると宮下は今までに、みたことのないトロンとした顔になっていた。
僕はその顔を見て笑いそうになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます