火星の末路

 20XX年、火星では火星人たちがパニックに陥っていた。

「大王様!大変です!地球にいる調査団からの報告によりますと、地球人の間で火星への移住計画が進められているそうです!」

「なんだって!それは本当なのか?」

「本当です!なんでも地球は環境汚染がもう手に負えないほど深刻な状況になっており、地球環境に近い我が火星が一番の候補に挙がったようです」

 それを聞いた大王は苛立ちながら言う。

「地球人というものはなんて勝手な生き物なんだ。今まで散々世話になってきた星を自らの手で住みにくいものにしたくせに、駄目になりそうになるとホイホイと簡単に捨ててしまう」

「本当に信じられない生き物ですね」

「地球人なんかにこの星を乗っ取られるわけにはいかない!何かこれを阻止する良い方法はないものか…」

 大王は必死に火星を守る方法を考えた。

「地球人は我々の存在には気付いているのか?」

「気付いてはいないようです。人面岩の存在は確認しているようですが、それについても光の当たり方のせいでそう見えるなどの意見が出ており、完全に無人の星だと思っているようです」

「なるほど。ならば我々火星人の存在に気付けば、この星に移住する計画は無くなるのではなかろうか?」

「それは名案だとは思いますが、どのような方法で我々の存在に気付かせるのですか?」

 大王はうんうん唸りながらあれこれ考え、やがて一つの案を打ち出した。

「そうだ!大都市を築こう!」

「大都市ですか?」

「そう、大都市だ。我々は今、地上ではなく主に地下で生活している。その生活環境を地上に移し、我々の技術を見せつけてやればいいのだ。そうすれば、あの星の技術は地球人よりも発達している、物凄く強力な兵器を持っている可能性がある、などと考え出し、やがては移住するのは危険だという結論に至るのではないだろうか。それに、我々も地下が一番住みやすいと思っているが、案外地上の方が住みやすいのかもしれんしな」

「確かに…。それは名案ですよ!」

「うむ。では早速皆に呼びかけ、急ピッチで作業に取り掛かるのだ」

「承知致しました!」


 火星人の数はわずか一万人規模だったが、自分たちの星を守ろうと皆が皆、寝る間も惜しんで必死に働いた。

 その結果、大都市は想定していたよりも早くに完成した。

「大王様…やりましたね…」

「ああ…これも星を守ろうとする…皆の…努力の…おか…げ………だ…」

 急ピッチで進められた作業のせいで、火星人たちの肉体は限界に達していた。

 完成した大都市を見て火星人たちは皆安堵し、安らかな笑みを浮かべて絶滅した。

 そして、より住みやすい環境になった火星は、地球人の第二の星となった。

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