育毛剤
ある日、松本博士のもとに親友の山田博士から電話がかかってきた。
「山田博士、久しぶりだな~。どうした?」
「松本博士よ、私はついに世紀の大発明をしたよ」
「世紀の大発明?一体何を発明したというんだ?」
「まあ、それは見てからのお楽しみさ。今から私の家に来ないか?」
「もったいぶらすな~。すぐに行く」
松本博士は山田博士の家へ急いだ。
山田博士の家に着くと、わくわくが抑えきれない松本博士はチャイムも押さずに玄関を開け、ズカズカと家に上がり込んだ。
「山田博士!一体何を発明…って…うわ!」
松本博士は、若くしてはげていたはずの山田博士の頭がフサフサになっているのを見て驚いた。
「どうだ?驚いただろう」
「いや~、本当に驚いた。山田博士の世紀の大発明というのは育毛剤のことだったんだな」
「そうだ。しかもこの育毛剤はそこらで売っているものとは比べ物にならない。どんな環境にいたとしても、個人差もなく必ず毛が育つ」
「それは凄い。素晴らしい発明をしたな。これを世に出せば山田博士の名が世界中に知れ渡るぞ」
「ははは、そうかな。自分自身もこの育毛剤によって幸せになれたし、世界中の人々を幸せにすることができたらいいな」
その後、育毛剤は瞬く間に世界中に知れ渡り、爆発的に売れた。
そして、山田博士は数々の賞を受賞し、後世に優秀な脳を残すため、カプセルに冷凍保存されることになった。
「松本博士、私がこのカプセルの中に入れば、君と楽しく話をすることもできないし、発明を競い合うこともできない。しかし、君もこれから先、必ずや素晴らしい発明をするだろう。そして、私と同じように冷凍保存され解凍された時に、二人でまた笑い合える日が来ることを信じているぞ」
「ああ、また後世で会おう」
松本博士と山田博士は熱く抱き合った。
それからというもの、松本博士は百以上もの発明をした。
大ヒットと言えるものこそ無かったが、その多くのものを発明する発想力が買われ、松本博士も冷凍保存されることになった。
「山田博士との約束を守れて良かった。カプセルに入る前に山田博士の所へ挨拶をしに行くとするか」
松本博士が山田博士の元へ向かうと、そのカプセルはどんな環境でも育つ毛であふれ返っていた。
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