第2話


『THE ZOON』

半年前にデビューして今少しずつ知名度を上げている5人組ダンス&ボーカルグループ。


グループ名の由来はメンバー全員の名前に動物の漢字が入っていることからきている。

動物園の"zoo"と、命を意味する"zoon"をかけたものだった。




「あれ?リーダーピアスどうしたの?」


THE ZOONでリーダーを務める兎本(うもと)にそう話しかけたのは、同グループメンバーの戸鹿島(とがしま)だった。

可愛らしい見た目と、苗字に"鹿"が入っていることから"バンビ"と呼ばれている。


「どこかで落としちゃってさ〜。バンビどこか知らない?」


「知ってる訳ないじゃん。はい、これ今日使わないから貸してあげる」


「バンビちゃんは今日もツンデレだね〜」


「もういい。貸してあげない!」


「ごめんごめん。ありがとね!」


渡されたものはリーダーにはいささか可愛すぎる気もしたが、せっかくなので着けることにした。




「はよー!ごめん!遅くなった!!」


「...トラ。 遅刻多い...」


レッスンスタジオのドアを開けて勢いよく入ってきた金髪の青年は、メンバーの虎谷(とらたに)。通称"トラ"。


そのトラを静かに叱りつけたのは同じくメンバーの猪子(いのこ)だった。

猪子は猪の子→ウリボウ→"ウリ"と呼ばれている。


「最近忙しくてまともに寝てないんだもん!」


「それは みんな同じ...」


「はいはいみんな揃ったな!レッスン始めるぞー! あとトラは、休憩時間みんなに詫びのジュース奢ることな!」


「えぇーーー!!!?」


「あはは!安いもんだろ? 

あとは...、タカ!こっち来い!始めるぞ!」


"タカ"と呼ばれた青年は、イヤホンを着けて壁にもたれかかっていた。

苗字の鷹取(たかとり)からそう呼ばれている。



「よし!じゃあ前回の復習からな!」


ボーカルのトラとタカを囲むように、ダンサーのウリ、バンビ、リーダーが配置につく。


音楽をかければ先程までの和やかな空気とは一変して、真剣にレッスンに取り組むメンバーたち。

リーダーは今この時を心の底から楽しんでいた。


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