第8話 意気消沈

 駅まで英子を送ってくれた圭は、また明日と言ってバス停へ向かう。その背中は寂しそうで、このままほっとくわけにはいかない。好きな人が振られて落ち込んでいるのだ。ここで圭を元気づけないと、ただ圭を傷つけたひどい女のまま終わってしまう。

(……圭くんは私を優しいと言った。でも私は優しいわけじゃない)

 改札を通らず圭の後ろ姿を見つめていた英子は、バス停へ走った。しかしタイミング悪く、圭はバスに乗ってしまった。


 翌日。

 英子はいつもと同じ曲がり角で待っていた。けれど、いつものように真と話す圭の声は聞こえない。そして、英子の横を真が通り過ぎていく。真に声をかけられたゆうが、二人だけで学校へ向かう。いつもの朝に、圭がいない。帰りだけでなく、行きも幼なじみの三人が揃わなくなってしまった。

 また明日。圭はそう言ったが、欠席の連絡が入ったと担任から告げられる。英子は自分がけしかけたせいだと思った。圭との親密度を上げたいという自己中心的な考えで英子が行動し、幼なじみの仲を引き裂き、皆勤賞だった圭を休ませてしまった。

 英子が後悔の沼にどっぷり浸かっていると、肩にポンと手を置かれた。担任から、顔色が悪い。だから保健室に行くか、早退をするかのどちらかを決めてくれと言われた。保健室で寝てもぐるぐると考え込んでしまうだけだと思い、早退する。教室を出るときに何か言いたそうなゆうと目があったが、そのまま教室を出た。

 駅まで向かっていると、グループチャットに連絡が入った。ゆうと真から英子を心配する言葉と、ゆうから英子個人向けに圭のことが書かれていた。いつも元気な圭が、今まで休んだことのない圭が休むなんて心配だと。

 英子と圭との関係をからかったことも謝罪があり、今ゆうは圭と会えない。だから少し休んで体調が回復するようなら、ゆうの代わりに圭を見舞ってくれないかと。圭の住所も書かれている。

(個人情報の漏洩じゃん……)

 英子も怒鳴ったことを謝り、自分の気持ちをも含めて全て圭に伝えようとバス停へ向かった。



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