第7話 怒り

 圭からの告白をなかったことにしたゆうの発言を聞き、英子はブチギレてゆうの手を振り払った。

「ゆうちゃん! 圭くんの気持ち聞いたでしょ!?   なんで何も言わないの!?」

「ちょ、どうしたの英子。大声を出すなんて珍しいね」

「誤魔化さないでよ!! 圭くんがどれだけ勇気を振りしぼったかわかる!? 幼なじみだからって、関係を変えたくないからって……。それでもゆうちゃんのことが好きだから、告白したんじゃん! その気持ちに向き合わないなんて、誠実じゃないよ!」

 捲し立てるように言ってしまった。ゆうは困ったように周囲を−−否、真を見ている。真の反応が気になるのだろう。

「真くん! 真くんはどう思う!?」

「お、おう、そうだな。確かに、告白した圭にゆうは何か答えを示すべきだな」

 真からの言葉を聞くや否や、ゆうはきちんと頭を下げた。

「ごめん。圭の気持ちには応えられない」

「返事をくれてありがとう。改めて、これからは一緒に帰れないから」

「わかった。本当に、ごめん」

 英子の予想だが、おそらく最後の謝罪は真の好きな子のタイプを圭に聞こうとしたことへの謝罪だろう。

 ゆうが真を促してこの場を去っていく。その背中をじっと見つめている圭に、声をかける。

「あの、ごめんね」

「どうして栄子ちゃんが謝るの」

「だって、圭くんとゆうちゃんの話を聞いていたのに、告白しろだなんて言っちゃって」

「気にしないで。というかむしろ、僕の方こそお礼を言わなくちゃ。あのままずっとゆうへの気持ちを抱えたままだったら、嫉妬に狂うヤバい奴になっていたかもしれない」

「そんなことないよ! 圭くんは真面目で誠実で」

「ふふ。ありがとう。英子ちゃんは優しいね」

「そんなことないよ……」

 英子の策略なんて知らない圭は、優しく微笑んだ。




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