第5話 憐れみ
英子から告白を促された圭は、考えるためにうつむいていた顔を上げた。
「ゆうも真も大切な幼なじみだけど、ゆうを真に取られたくない」
「そうでしょ。それなら告白しないと」
「でもどうせ振られるし……真と違って背も高くないし、筋肉もないし……」
悩む圭に、英子は本音を交ぜながら助言する。
「圭くんの魅力は見た目じゃないよ。困っていたら助けてくれる優しさとか、一途に思い続けられる情熱とか、はにかむような笑顔が素敵だと思う。そんな圭くんの気持ちを知ったら、ゆうちゃんも圭くんを異性としてみるかも」
「そ、そうかな?」
「そうだよ」
「なんか、成功しそうな気がしてきた」
「そう、その意気だよ」
「ありがとう、英子ちゃん。僕、行ってくるよ」
「頑張って!」
圭を送り出した英子は、置いたままだったじょうろの所へ行く。そして持ち上げようとして座り込んだ。
(……たぶん、大丈夫だよね?)
自分なら、振られると分かっていたら告白しない。親密度を上げて、両思いだと確信を得られてから告白する。傷つきたくないから。
圭に告白を促したのは、ゆうに振られるだろうと思ったからだ。振られて、告白することを知っている英子の元へ報告に来るだろう。そして慰めて、親密度を上げて……。
「あー……最悪だな、私は」
大きなため息をこぼし、じょうろを持ち上げる。最初に持ってきたときよりも重たく感じた。
もしかしたら圭と一緒に水やりをできるかもと浮かれていた、少し前の自分を責めたい。圭の笑顔が好きなのに、その好きな人の笑顔を曇らせるようなことを促してしまった。
「……せめて、事の成り行きを見守らなくちゃ」
英子は手早く水やりを済ませ、じょうろを片し、ゆうに告白しに行った圭を追いかけた。
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