第4話 あやふや
ゆうを見送った後、何とも言えない空気になった。英子と圭は二人とも沈黙している。
「……英子ちゃん、さっきは僕の味方になってくれてありがとう。それと、関係ないなんて言ってごめん」
「ううん、私もでしゃばっちゃってごめん」
いやいや僕が、私が、とお互いに謝ることを繰り返し、二人同時に笑った。
ひとしきり笑った後、圭が気まずそうに聞いてくる。
「……もしかして僕の好きな人がゆうだってばれてる?」
「えーと、まあ……」
「そっか、何だか恥ずかしいな。高校から友達になった英子ちゃんにばれてるなんて」
照れ隠しなのか、圭はほんのり顔を赤くして頬を搔く。
「全然恥ずかしくなんてないよ! ゆうちゃんを見る圭君の目はキラキラ輝いているし……」
勢いのまま告げる。このまま告白してしまおうと思ったが、ふと我に変える。
(……私が告白しても、今はまだ振られるだけだ)
栄子が告白を思いとどまると、圭がはにかむように微笑む。
「英子ちゃんは優しいね」
「そ、そんなことないよね。圭くん、圭くんはゆうちゃんに告白しないの?」
「できれば、したくないかな。幼稚園からの付き合い方が変わっちゃうかもしれないし……」
「でも、もう変わっちゃったよ。ゆうちゃんに一緒に帰れないって伝えちゃったし。それに圭くんは、ゆうちゃんの彼氏になりたくない? 真くんとゆうちゃんが恋人同士になったら、心の底からお祝いできる?」
英子は圭にゆうへの告白を促す。それは好きな人の恋を応援したい気持ちが八割。好きな人が幸せになってほしい気持ちが一割。振られたところを慰めて親密度を上げたい気持ちが一割。
(……いや、私はそんな善人じゃない)
もちろん、好きな人には幸せになってほしい。しかし、英子は圭とゆうのやり取りでほぼ確信しているのだ。今、圭がゆうに告白しても振られるだけだと。
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