第2話 唖然
英子は圭を好きで、圭はゆうが好き。なんてことない、いつもどおりの日常。それがずっと続くと思っていた。
放課後。英子は美化委員会の集まりに参加していた。すぐに終わると聞いていたから、四人で帰ろうというゆうの提案を断らなかった。しかし、実際は花壇に水やりをすることになってしまった。各委員が担当の花壇に水やりをすれば終了、解散という流れ。
英子が担当する花壇は校内の一番奥。これ以上待たせてはいけないと、三人が待っているはずのニ年三組の教室に向かう。先に帰ってもらおうと教室に入ると、だらんと力なく座っている圭を発見した。いつも明るい圭が落ち込むなんて珍しい。そう思い、英子は 圭 に近づき話しかける。
「圭くん。どうかしたの?」
話しかけても圭は無反応だ。無視されたというより、ぼんやりとした目つきで心ここにあらずという様子。いつもの、ゆうを見る熱っぽいキラキラとした目の輝きが失われている。
もう一度声をかけようか。英子が迷っていると廊下からゆうの声が聞こえてきた。その瞬間圭が急に立ち上がる。そして栄子とぶつかった。
「ご、ごめん」
「ううん、大丈夫」
そんな短い会話の中でさえ、圭は廊下の方を気にしている。毎日見ていた、熱っぽい視線ではない。それどころか、まるでこの場から逃げ出したいのではないかと思えるほど、弱々しい目だ。
ゆうが近づいてくる。英子は深呼吸をし、圭の手を掴んだ。
「圭くん、場所を移動しよう!」
好きな人の元気がない姿なんて見たくない。そう思い、英子は圭の手を引いて教室を飛び出した。
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