第42話 恋想熱波その2
酷く淫らな誘い文句に眉根を寄せる暇もなく柔らかい媚肉を撫でられて、勝手に吸いついていく蜜襞の動きに泣きそうになる。
虎島はまりあが悦がる場所を迷うことなく嬲って来た。
狭い隘路の奥を優しく撫でて引き戻す指を折り曲げて上側を撫でられる。
腰を浮かせたまりあに軽く体重を掛けてシーツの海に沈めながら、そのまま指を動かした。
熾火のような快感が一気に燃え上がって呼吸が浅くなっていく。
飲み込まれるのは、愉悦の海ではない、虎島の腕の中だ。
堕ちたら間違いなく溺れてしまう。
「っふ・・・ぁ・・・・・・っン」
「こら、逃げるな」
必死に爪先でシーツを引っ掻けば、顔をしかめた虎島が腰を抱え直した。
そのまま手首を返されて違う場所を刺激される。
「ひぅ・・・っっ」
びくっと腰を跳ねさせれば、すかさず上から逞しい身体が圧し掛かって来た。
「なんだ、ここもイイ?・・・・・・あんたほんと敏感だな・・・」
滑らかに指を動かして、さっき見つけたその場所で指を往復させながら、虎島が耳元で囁く。
耳たぶを派手引っ張られて、肩をすくめたら耳の後ろを舐められた。
首筋に降りて来た唇が輪郭を辿って、枕に擦りつけている頬を軽く持ち上げられる。
目を伏せた虎島が、柔く唇を食んだ。
「ふ・・・っ・・・」
ぬるりとした肉厚な舌が忍び込んできて、上顎を擽られる。
煙草の苦みの残るそれが、自分の味を教え込むように舌の表面を行き来した。
合わせて沈めた指を動かされるとまた思考が濁って心地よさに満たされる。
舌先を弾いては擦り合わせて、頬裏を舐めた後で虎島が唇を解いた。
二人の隙間で生まれた銀糸を舐めとった彼が、こちらを見下ろしてくる。
「俺の指、もうぐしょぐしょ。見ます?」
いつの間にか増やされていた指が、水音を響かせるように隘路の奥を暴いた。
「~~っ」
必死に目を閉じて結構ですと訴えれば。
「ああ、見なくてもわかるか。ほら、ね?・・・まりあちゃんがいっぱい悦がってくれたから・・・・・・まだ馴らす?」
十分やらかそうだけど、と根元まで沈めた指を揺らされて、慌てて唇を噛んだ。
最後までするのは数年ぶりなので、そんなこと訊かれてもわからない。
処女ではないので今更だけれど、ブランクがあると痛みを伴うと聞いた記憶があったので、少しだけ怖くなった。
「・・・・・・や・・・さしく・・・して」
これまで虎島と過ごした時間で、彼が女性慣れしていることは嫌というほど分かっていたし、手酷く抱かれるとも思わない。
が、オメガとアルファとして誰かと抱き合うのはこれが初めてだ。
「・・・そりゃあもう、この上なく優しくするつもりですが・・・・・・最後までゆっくりできるかは、あんた次第でしょ」
背中を向けて準備していた虎島が振り向いて足の隙間に戻ってくる。
大きな手のひらで労うように下腹部を撫でられて、息を吐いたら腰を抱かれた。
蜜口に浅く引っ掻けた切っ先を軽く揺らして馴染ませた彼が、言葉通り慎重に腰を進めてくる。
「・・・ぇ・・・ぁ・・・っ」
久しぶりに感じる違和感と圧迫感に呼吸を忘れた。
こんなに苦しかっただろうか。
「こんな状態で足開かれると・・・・・・色々と・・・・・・加減がね・・・息吐いて」
「あし・・・開いて・・・な・・・・・・っぁ・・・ぁ・・・」
まるでまりあから誘い掛けたようなセリフに、虎島を睨みつければ、珍しく眉根を寄せた彼が唇を引き結んだ。
そのまま最奥まで埋め尽くされる。
押し開かれた感覚はあったけれど、怖くはなかった。
蕩けた蜜襞がきちんと虎島の熱を包み込んで甘く戦慄く。
息が止まったのは一瞬で、ぐうっと捻じ込まれた屹立が深い場所をノックして来てすぐに声を出さずにはいられなくなった。
「ふ・・・っぁ・・・ぁ、ぁ・・・」
感じる場所で小刻みに律動を送られて、何度も腰を跳ねさせる。
まりあの身体をシーツに縫い留めながら、虎島が酷薄に笑った。
「なんだ・・・・・・奥も馴染んでるじゃねぇか」
もっと初心な印象を抱いていたのだろうかと必死に彼を睨みつけた。
「・・・・・・いいね・・・その顔・・・塗りつぶしてやりたくなる」
人の悪い笑みを浮かべた彼が、劣情を隠そうともせず腰を揺らす。
媚肉を押し撫でて穿って、甘やかすように嬲ってはまたこじ開けて。
少しずつ快感の雫が腰の奥に溜まっていって、虎島の指が無防備な花芽を摘まんだ瞬間それは一気にはじけた。
「~っんん~~~っっ」
ぶわりと爪先から電流が駆け上がって背筋を伝って抜けていく。
見知らぬ空に放り出されて目をつぶればそこから一気に急降下してシーツの海に沈められる。
限界を訴える隘路が飲み込んだ熱を引き絞って、もっともっとと蜜を零した。
指や唇でされた時とはくらべものにならないくらいの快感が押し寄せてきて、震える手を伸ばせば。
汗ばんだ指を甘噛みして虎島がもっと奥を寄越せと腰を揺らした。
「ふぁ・・・っん・・・ま・・・って・・・」
余韻が抜けきらないうちに最奥を責められて涙目で訴える。
「待ってたら、朝が来ますよ?お嬢さん」
まるで生娘を慰めるような声で優しく頬を撫でられて、片足を肩に担がれた。
軽く背中を押されて横向きになると、目の前の枕を抱きしめるように促される。
すべらかな枕カバーに頬ずりしたら、身体を倒した虎島が体重を掛けてもっと深い場所まで探って来た。
「~~っ」
内臓を押し上げられるような感覚に、必死に枕に縋りつく。
「慣れたら、俺に縋りついてくださいね」
耳元で笑った虎島が、少しも萎えていないそれでぞろりと柔らかい媚肉を冒した。
終わりが見えない夜を知った、初めての夜だった。
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