第3話 夏野(なつの)の場合
俺はみんなのエンターテイナー。動画配信者の話題やお笑い芸人の面白いフレーズを活用して楽しませる。今日も俺の冗談でみんなは大笑いしている。とても愉快で気持ちがいいし、楽しい。
でも、時々少し怖くなる。
俺が冗談を言うことをやめてしまったら、今一緒に笑っている友達は友達のままでいてくれるのだろうか。俺のことをつまらないやつだと思って見捨てやしないだろうか。
本音を言うなら、俺だって静かに読書したり一人でのんびりしたい時もある。でもキャラじゃない。アホなこと言ってバカ笑いしている俺が本なんて読みだしてみろ。絶対に怪訝な目で見られる。しかもその本が芥川龍之介だとか夏目漱石だった日には、俺のアイデンティティは完全崩壊するだろう。
マイペースでいつもにこにこしているクラスメートの涼太は、嘘を吐くのが苦手だと言っていた。すぐになんでも顔に出てしまうし、思ったことを言ってしまうという。確かにそんな感じはするが、彼が正直にに思ったことを言っても周りは嫌な気分にならない。発言がかわいらしいし、素直なんだ。あいつは心がきれいなんだと俺は思う。だから、素のままの自分を認めてもらっている。
ああ、涼太になりたい!
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