戦闘開始
伏鹿角が迷宮の中を走り出す。
狭い通路の中、チェーンソーの刃が岩盤に辺り火花が散り出す。
甲高い音を鳴らしながら
伏鹿角は鬼の方へと接近する。
鬼が音に感づき声を漏らす。
獣の様な、獅子の咆哮に近い。
声を発すると共に、伏鹿角の方に迫る。
両腕を構え、伏鹿角を切り裂こうと黒い爪を、こちらの方に向けた。
その際に、伏鹿角は、武器を構えた。
鬼殺しを見せると、鬼の行動速度は減速する。
その武器に対して恐怖を覚えているのだろう。
それもそうだ、その鬼殺しは名前の通り、鬼を殺す事に特化した特攻武器。
鬼はそれを見るだけでも、行動能力が低下してしまうと言う性能を持つ。
これによって、鬼は本来の能力を発揮する事なく、能力が低下した状態で伏鹿角との戦闘を余儀なくされた。
「ちッ」
先手は伏鹿角だ。
鮫肌を鬼の方に向けて、足の部分にチェーンソーの刃を当てる。
ギャリギャリと、鎖に連なる刃が肉を噛み千切り、血を噴き出した。
肉が抉れた事で、鬼は痛みを声として漏らす。
筋肉を膨張とさせ、伏鹿角の攻撃を防御しようとした。
しかし、その状態で伏鹿角に攻撃しない事は極めて利口な判断とは言い難い。
「(自分の体が一番だと過信してるのか)」
確かに膨張させた筋肉では、チェーンソーの刃が食い込まない。
例え食い込んだ所で、筋肉が引き締まり、鋼の様な硬質さを見せるだろう。
そうなれば、鮫肌の能力、その利点が削がれてしまう。
だが、武器を変える。
伏鹿角が握り締めるは鬼殺し。
鬼に対して高い能力を発揮するこの武器は、例えどの様な防御であろうとも、鬼殺しは鬼の防御を無視して切断する。
鬼の足を切り、血が刀身に付着する。
それを払う様に、鬼殺しを上から振り上げて、鬼の首から脇に向けて、斜めに斬りさった。
鬼はその一撃を以て、絶命と言う道を辿る。
重苦しい体が、ゆっくりと地面へと倒れて臥せた。
血液が噴水の様に噴出すると、そのまま鬼の体は灰となっていく。
ある肯定、手順を踏まない限り、あるいは術具を使用しない限りは、迷宮内部に存在する術像は、死後、肉体を砂の様な粒子に変えて死亡する。
それが、この迷宮内部に存在する術像の最期であった。
「…ふぅ」
伏鹿角は心臓の高鳴りを抑える。
この迷宮は、彼にとっては最高の場所だ。
命を懸けた戦いが出来るこの場所こそが、生への実感を感じるのだと。
「よし…先に、進…」
「こほっ」
絶好調だった伏鹿角は、唐突に熱が冷めていく様な感覚に見舞われた。
声が聞こえたので、その声に対して伏鹿角は視線を向ける。
其処には、隠れていた雪消癒遊の姿を見つけた。
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