迷宮侵入
伏鹿角の行動理念は実にシンプルだ。
迷宮に潜り、命を懸けた攻略に準じる。
迷宮に魅入られた人間の一人、その行動は決して止める事は出来ない。
雪消癒遊を一人残しても、彼に後ろめたさも後ろ髪を引かれる思いも無い。
ただ、迷宮で生きれればそれで良いのだ。
そうして、伏鹿角は迷宮内部へと侵入する。
「(この迷宮を作り上げた大罪の術師。古より存在した術師は現在に至るまで迷宮を形成しつつある。まだ誰も、この迷宮を攻略出来ていない、俺は、迷宮攻略者として、この迷宮を攻略したいんだ)」
それが、伏鹿角が生まれた意味なのだろう。
「…」
迷宮へと入る。
そしてその後ろには、雪消癒遊が居た。
「(鹿角さま…)」
迷宮に入ると言う事はどういう事か。
それは即ち、長い期間、家には戻らないと言う事。
そう考えると、伏鹿角へと会いに来た彼女は、伏鹿角から離れ離れとなってしまう。
「(激しく動かなければ…私も迷宮で動く事は出来ます…)」
だから、雪消癒遊は伏鹿角に悟られぬ様に、遠い場所に隠れながら動いていた。
伏鹿角は、鈍感であるのか、雪消癒遊が近くに居る事を知らないらしい。
「(…『竜骨』が破壊されたからな、新しい術具が欲しい所だ)」
伏鹿角は自らの術珠を確認した。
白い色をした小さな数珠玉。そしてそれよりも大きめな紫色をした数珠玉が四つある。
紫色をした数珠玉が、術具を内包する事が出来る宝玉だ。
この数珠は『協会』が提供しているものであり、術具を多く奉納すれば、その報酬として数珠玉を渡される。
この数珠玉が多ければ多い程に、迷宮攻略者としての戦歴と階級を現した。
『竜骨』の破壊によって、これで空きが二つのみになっている。
元々、伏鹿角は一つだけ容量を開けている。
術具を回収した時に、内包する為だった。
「(『星砕き』と『鬼殺し』…それと、倉庫に入れて置いた『鮫肌』の三つだな…)」
どれも、鋼に関する武器だ。
伏鹿角の属性は地から派生した鋼であり、金属類の術具であればそれ相応の能力を発揮する事が出来ると言う万能な属性だった。
その反面、鋼と言う属性は近接系や物理系の術具が多いので、否応なく近接戦になってしまうが、問題は無かった。
「早速か」
早速、伏鹿角は遠方から迫る影を見る。
其処には、大柄な鬼の様な化物が迫って来ていた。
「鬼なら…『鬼殺し』、それと、『鮫肌』」
術具を術珠から解放する。
黒い刀身に赤い波紋が刻まれた一振りの刀。
もう片方は、名前からは想定しづらい、チェーンソーの様な形状をした武器。
それを構える事で、伏鹿角は戦闘を開始した。
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