第2話
僕は鍋子を無視して足早に商店街をつっきった。
後ろに鍋子のついてくる気配があったので、僕は安心して歩くことができた。
どこかで彼女に甘え、すがっているのかもしれなかった。
そんな自分が醜く頭のなかの鏡に映し出されて、吐き気がした。
僕は気づかれないように道端に唾を吐いて、気分を変えた。
ファーストフード店についた僕たちは注文を済ませて席に座った。
鍋子がハンドバックの中に手を突っ込んで、包み紙を取り出した。
「お誕生日、おめでとう。ごめんね、お金がなくてこんなものしか用意できなかった
の。結婚して五年、四十二歳に貴方なったのね。今までありがとう、これからもよろ
しくね。」
プレゼントをテーブルの上においたまま、僕はハンバーガーを食べてスマホの画面に
視線を落とした。内心、嬉しくないわけではなかった。笑顔の一つでも返せばよかっ
たのかもしれなかったが、鍋子の調子ずく様子を見たくなかった。鍋子はそれでも気
落ちすることなく、コーラを飲みながらポテトを食べていた。
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