哀しみの構造の家

@mikado2019

第1話

この暗闇が押し戻されるころには、僕の気分もサッパリする。


あいつを殺せればいいけれど、法を犯してまでやる価値のある命ではない。


だから生かしておいて、せいぜい飯でも食わしてもらおうかと思って。


そんな理由で結婚した。




はじめは鍋子は浮足立っていたが、僕のわざとらしい冷たい演技を見破ることもな


く、始終時間旦那の顔色をうかがうことになった。


その様子を見て笑いをこらえると、なぜか僕は優しくなれた。




四月十二日、日曜日。


僕と鍋子は映画をみに行くことになった。


雨が今にも落ちてきそうな暗い空、風が強く町中を流れて道をふさいでいた。


PM一時開始の映画、腕時計をのぞくと一時間の猶予がある。


それを知るなり僕はイライラした。


鍋子は何も言わず、おどおどしている。


昼飯でも、と機転を利かせればよいものを。




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