第2話 相性が良いらしい


 目の前の笑顔のウーラノスは置いておいて、私は止まってしまった思考を再び動かす。


 この世界に連れてきた理由が最高に相性がいいから?


「……そ」


「そ?」


 天音から出てきた言葉に首を傾げるウーラノス。


 そして私は溜めに溜めた言葉を叫ぶ。


「そんな理由で連れてきたんかい!! 相性が最高にいいとか占いかよ!!」


「あ……」


「何!? 神様も相性とか気にする訳?!」


「あの……」


「大体、私の他にも相性いい人なんているでしょ!? 絶対に!!」


 とりあえず思っていることを全部言った。立て続けに言ったせいで息が上がっている。


 私ははぁはぁと息をする。


 ウーラノスは天音の様子に驚きオロオロしながらも説明する。


「……あの、神様と最高に相性がいい人なんてなかなかいないんですよ」


「ああ?」


 天音の気迫にビクッとするウーラノス。それでも負けずに話続ける。


「まず、神である私達と人である者はそもそも造りが違います。 人は神が創り出した生き物。どんな魂も元を辿れば全て等しく神に創造されています。 人は輪廻転生を繰り返して高次元の存在には限りなく近づけますが、人を導く存在にはなれません。 ただ、稀に自然に生み出された魂が存在するのです」


「うん? 自然に生み出された?」


 私は難しい話に必死に理解しようと頑張った。


「そうです。その者達は我々神が創り出した魂ではない、我々と同じように自然に突然生まれた存在。生まれた場所が人の住む世界であったために人としての魂になったということです」


「それなら人が住む世界じゃなかったら……?」


「我々と同じ存在にはなっていたかもしれないですね」


 生まれた場所によれば神様にもなれたってこと?


 ああ、ちょっと頭が痛いわ……。


 私はこめかみを抑えた。


「それで、自然に生み出された魂がいるってことは分かった。だけど、私とは関係ないでしょ?」


 その問いを待ってましたとばかりにニヤリとし答えるウーラノス。


「その稀な存在が天音さん貴方なんですよね〜」


 話の流れからそうだとは少し予想していたけど、いざ言われるとどうも信じられないな……。


 私は信じられない思いが顔に現れ怪訝な目をウーラノスに向けた。


「そんな疑うような視線で見ないでください。天音さんが稀な魂だと言うことは地球の神様も分かっていることなんですよ!」


「まあ、私にはどうやっても確かめようが無いので信じるしかないですがね……」


 少しまだ、信じられていないけど話が進まないのでとりあえず飲み込んでおく。


 そんな私の様子にウーラノスは苦笑いだ。


「神との相性があるのは稀に生まれた魂のみ。神が創造した魂には元々神との相性など存在しません」


 その説明に混乱する。


「つまり……、どういうこと?」


「例えば稀な魂は神と相棒的な存在になれるけど、創造した魂は絶対になれないって感じですね」


 なかなか難しいけど、神様と同じ土俵に立てるか立てないかってことだな……。


 私はそう解釈した。


「で、話は戻るとその稀な魂である天音さんが更に稀なことに神である僕と最高に相性がいいんですよ!!」


「ふーん……」


 反応が薄い私。


 対して少し興奮気味のウーラノス。


 2人の温度差は激しい……。


「天音さん! これは本当にほんっっっとうに奇跡的な事なんですよ!!」


「そう言われてもいまいち、ピンとこないしね……」


 ウーラノスは私に近づき力強く言う。


「もう! 神様である僕が言っているのに!!」


 近づいた距離に反射的に距離を置こうと後ずさる私。


「ちょ、ちょっと近い!」


「ああ、すみません……。つい熱くなってしまって……」


 ウーラノスは少し恥ずかしそうにする。


 私はそんなつもりはなくても美しいウーラノスが近づいてきて反射的に頬を赤くしてしまう。やっとこの状況に慣れてきてウーラノスの人外の美しさに気づいた……。


 離れた距離にほっとする。そして私はウーラノスに話を進めるように促す。


「私が稀な魂で貴方と最高に相性が良いということは理解した。 それで、私に何を望んでいるの?」


 私の問いにウーラノスは真剣な表情で答える。


「天音さんには僕の世界の地上の管理者になっていただきたいのです」


「……地上の管理者?」


 聞き慣れない言葉にはてなマークが頭に浮かぶ。


「ええ……。 私の世界は天音さんがいた地球よりは少しばかり未熟なのです。それゆえに魂も未熟な者が引き寄せられやすいのです」


 ウーラノスが言うには、人の魂は輪廻転生を繰り返して魂を成長させている。人が一つの生を終えて行き着く先は冥界そこでは皆等しく前の生の記憶をリセットされる。そして、前の生での善悪や、成長できた事できなかった事で次の転生先つまり何処の世界に行くかが決まる。決まったらあとはその世界に生まれ変わるだけ……。人の魂はこの繰り返しで魂を成長させていく。


 その過程でウーラノスの世界にちょっと困ったことが起きてしまった。冥界は複数の世界が繋がる場所でもある。人の善悪などを判断するのは冥界の神のお仕事、だけど転生先の世界は複数ある中から完全にランダムに振り分けられる。


 ランダム故に世界に合わせての魂が引き寄せられることが多くなってしまった。天音がいた地球のように善と悪の魂が平等に転生しているのは世界が成熟しているから。ウーラノスの世界のようにまだ未熟だとそのバランスがどちらかに傾いてしまっている状態なんだとか……。まだ善の方に傾いていると世界は崩壊まではいかない。しかし、悪の方に傾いた場合が大変になるらしい。


 悪の方に傾いた場合、簡単に言うと世界が混沌に陥る。そして最悪世界が崩壊する……。


 ただ、それなら善の魂だけの方がいいかもしれないと思うがそれでもダメらしい。善の魂だけでは世界も人の魂も成長はしない。故に何事にもバランス。善と悪は光と影のようにひとつであるように丁度良さを求めている。


 





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