第18話

「ここ、宇治は『源氏物語』の『宇治十帖』の舞台や。宇治十帖は、光源氏亡き後の物語で、わいと同じ名前の薫ちゅうんが主役みたいなもんや。で、そのライバルの匂宮や宇治の姫君も登場する恋物語やね。宇治と憂しが掛詞になっとってな……(以下略)。そういう訳で、夢浮橋いうんや」

 ……長げーよ。一人で、何ページも喋ってんじゃねえよ。以下略を使っちまったじゃねえかよ。

 全く、とんだ文学少年だぜ。

「一人で、あれだけ喋るのも、面白そうね。今度、私もやってみようかしら。高村君への罵倒の言葉なら、色々と思い付きそうね」

「止めろ、おれのハートがもたない」


 京都の旅というから、金閣寺とかオーソドックスな所に行くのかと思ったが、行く所行く所、マニアックだ。

金閣、銀閣、平安神宮には目も呉れず、平等院鳳凰堂(名前がカッコいい)、清明神社(陰陽師)など。

 薫の長い解説付き。


 逢坂家に着くと、薫オトンが夕飯を作って待っていてくれた。

 お勤め、ご苦労様です。


 夕食後、おれは春休みの宿題に取り組んでいた。

 白鳥は薫に呆れながらも、勉強を教えていた。

「無理やって。わい、数学は平方根辺りから出来へんもん。数学アレルギーやって言うたやろ?」

 数学アレルギーって何だよ。

「これくらい、頑張りなさいな。簡単じゃないの」

 まあ、とにかく頑張れ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る