第16話

「ここが、清水寺やで」

「清水の舞台から、飛び降りても良いわよ、高村君」

「お前は、おれに死ねと言っているのか」

「勿論、冗談に決まっているでしょう。大事な下僕に死なれては困るわ」

 大事な、ねえ……。

「では、写真でも撮りましょう。丁度、桜が見ごろだから」

 あの写真と同じ場所だ。

 白鳥は、中学の時も、こんな感じで旅を始めたのかもしれない。

 薫が近くに居た人に、シャッターを押してくれるよう頼む。

「では、撮りまーす。ハイ、チーズ」

 パシャッ。

 白鳥は微笑んでくれているだろうか。


「あれが、音羽の滝やね。この滝の水を飲むと、長寿、恋愛、学業のご利益があるで~」

「あなたたち二人は、学業の水を飲みなさいな。……私は、長寿の水でも飲もうかしらね。両親が短命だった分、私が長く生きないとね」

 ドキッとした。

 やはり、昨夜の話が思い出される。

「あら、どうしたのかしら、高村君?」

「い、いや、何でもねえよ」

 悟られないようにしないと……。

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