第15話
次の日は、快晴だった。
「今日は旅行日和よ、高村君」
朝食が済み、白鳥が自作の旅の行程表を持って来て言った。
随分とノリノリじゃないか。
「最初は、清水寺に行くのよ」
あの写真と同じ場所だ。
昨夜の薫の言葉が脳裏に蘇ってきたが、平常心を保った。
白鳥と旅を楽しむんだ!
そう、自分に言い聞かせた。
白鳥の計画によると、おれと白鳥と薫の三人で京都の観光地巡り、薫オカンと弟たちの四人で、大阪で一番有名な某テーマパークに行くらしい。薫オトンは仕事。
「USJでしょう?」
おれが、せっかくぼかしてやったのに。
「何で、別行動なんだよ。しかも、あっちだけホテル宿泊かよ?」
「だって、一日では回り切れそうもなかったから。それに、私は人込みが嫌いなの。春休みだから、ああいうテーマパークは人が集まるでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
いや、京都だって人は沢山いるんじゃねえの?
「それに、彼等にとって、京都の神社や仏閣巡りは退屈なのではなくて?」
「そうだろうけどさ。でも、薫オカンが大変だろ、子ども四人も面倒みるのは……」
しかも、人様の子だぞ。気を使わせちまう。
「伯母さんは、大丈夫だって言ってたわ」
「それに、もう手遅れちゃう?」
ここは、京都へ向かう電車の中であった。もう、出発してしまっている。
「秀は弟たちが心配なんやね。優しいお兄ちゃんやん」
「伯母さんを信用なさいな、ブラコンシスコン高村君」
「その呼び方、止めろ」
こんな会話をしながら、京都へ向かって行ったのだった。
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