蒼の真実

俺は、オルゴールを貰って家に帰った。りっくんがいなくなるなんて、考えたくなかった。


コンコンー


帰宅して、りっくんの部屋の窓を叩いた。


理一:「何か用?」


蒼:「あのさ、りっくん」


理一:「花岡さんとうまくいってよかったね!応援するよ」


りっくんじゃない。ハッキリとわかる。こいつは、りっくんじゃない。


蒼:「あっ、ありがとう!じゃあ、またな」


俺は、窓を閉めて部屋に戻った。行かなきゃ!りっくんの元に行かなきゃ!


オルゴールに写真を入れて、ネジを巻いた。

ベッドに横になって目を瞑る。視界がグニャリと変形し始める。


蒼:「落ちるー」


ビルから、まっ逆さまに落ちたと思ったらギリギリで止まった。兎に角、目を瞑っておこう。


目を開けると鮮やかな色彩広がっていた。俺の中に記憶が流れ込んでくる。さっきの人に説明された事を思い出した。


雅人:「君のオルゴールは、彼のオルゴールと違う点が一つだけある。それは、君は別世界むこうの記憶もあるって事!彼は、こっちの記憶しか持ってないけど…。君は、両方を持ってる」


その言葉通り、俺はりっくんをすぐに見つけられた。「FLOWERLily《フラワーリリー》に行ってたの?」俺は、そう言ってりっくんに声をかけたんだ。現実世界あっちとは違って、別世界こっちではりっくんは女の子だった。可愛くて可愛くて堪らない。


キスをしたいけれど、さっきの人が言っていた。この世界では、結婚式で初めてキスが出来るんだって!そう言えば、俺はいつからりっくんが好きだったんだろうか?


物心ついた時には、好きだったんじゃないだろうか?だって、ザワザワしていたから…。ずっと、胸ん中が…。でも、それを見ないフリしていた。


いったん、現実世界こっちに帰ってくる事になった。どうやら、花岡さんと明日デートする事になったらしい。俺は、りっくんの部屋に行く。嘘をつくのは、こっちの俺の為だった。シャツをくれた。嬉しかった。今すぐりっくんを抱き締めたかったけど、やめた。


部屋に戻ってきて、オルゴールを巻いた。別世界あっちで、りっくんを抱き締めよう。シャツを抱き締めながら目を閉じた。


戻ってきた時には、どうやら時間が進んでいた。明日、結婚式だと言うことがわかった。ヒントをボソボソと言っても、りっくんは気づかなかった。


蒼:「りっくん」


わざと呼んでみたけど、お化けでも見た顔をしている。言わない方がいいのかな?でも、もう我慢できなかった。だから、話しちゃったんだ。

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