理一が知らない話

オルゴールを渡した後の話

私は、一つだけ理一君に言えない事があった。あの異次元せかいに私は、雅人まさひとを連れて行ったのだ。


雅人:「説明はしなかったの?」


田宮:「うまくいかなかったから」


そう今までの人達は、うまくいかなかった。


雅人:「そうだったね」


雅人まさひとは、そう言って私の髪を撫でる。別世界あっちで、理一君の好きな人と結婚する為にはこっちの本人を連れて行かないといけないのが決まりだった。


雅人:「どうするの?」


田宮:「どうしたらいいのかなー」


私は、どうしようも出来なくて悩んでいた。私が雅人を連れて行けたのは運がよかった。雅人は、結婚して子供が出来てから精神を病んでいた。ある日、自殺しようとした雅人に私は告白をした。そして、別世界むこうに行こうと誘ったのだ。雅人は、行くよと言ってくれた。それだけ、精神的に追いつめられていたからだった。でも、理一君の彼は違う。


雅人:「嘘つきになっちゃうね」


雅人は、他人事だと思って笑っている。


田宮:「どうしたらいいか考えてよー」


私は、雅人の頬をつねる。


雅人:「可愛い!愛してるよ」


田宮:「今は、おじさんでしょ!」


雅人:「もう、そんなの気にならないよ!だって、俺は生きてるんだから」


田宮:「雅人」


知らない人:「あの」


キスをしようとした私達に声をかけてきた。


田宮:「何?」


知らない人:「さっきのは、魔法ですか?」


田宮:「魔法って何?」


知らない人:「ほら、さっきりっくんと話して姿変わったでしょ?」


その言葉に私は、彼が理一君の想い人だと知った。


田宮:「あのね、君は好きな人は?女性?男性?」


蒼:「何?急に」


田宮:「教えてくれないかな?」


彼は、恥ずかしそうに俯いてこう言った。


蒼:「さっき、りっくんがいなくなって!ここが、ザワザワした。でも、男を好きになったら両親が悲しむんだ。それに、俺はそういう人が気持ち悪いと思っていたから」


私が話そうとするのを雅人が止めた。そして、代わりに話し出した。


雅人:「君の気持ち、よくわかるよ!俺もそうだったから…。でもね、その気持ちに嘘をついてしまうと自分が崩壊しちゃうんだよ。だから、君さえよければ彼と一緒に別世界むこうに行かないかな?」


私は、初めて雅人の真実を知った。


蒼:「行くよ!りっくんを失いたくないんだ」


雅人:「その代わり、彼に本当の話をするのは結婚式の前日だよ!わかった?」


蒼:「どうして?」


雅人:「彼はきっと君が自分を好きじゃないって思ってるから!すぐに話すと警戒しちゃうから…。わかった?」


蒼:「わかった」


雅人は、彼にオルゴールを渡していた。使い方を説明していた。私は、それを見つめていた。

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