異次元の花嫁

彼シャツ

蒼:「大丈夫?」


理一:「うん」


蒼にゆっくり起こされる。


女の人:「すみません」


理一:「大丈夫です」


白い服を着てるのが、わかる。


バサッ…。


蒼:「服透けてる」


理一:「あっ、えっ、ごめんね」


蒼:「他の人に、理々花の体見られたくない」


蒼の言葉に僕は、泣きそうになる。蒼が着てたシャツを着せられてる。それが、今の僕には大きいのがわかる。


蒼:「とりあえず、いったん帰ろう」


理一:「うん」


確かに、蒼はシャツの下に着てた下着だけだし。僕は、びしょ濡れの白い服に蒼のシャツだ。


彼シャツっていうやつだ!何かで読んでから、僕は憧れた。でも、僕が蒼の服を借りた所でブカブカにはならないのはわかっていた。どう考えてもサイズが同じなのだ。


だけど、今は違う。蒼のシャツがブカブカなのがわかる。手の長さも違う。


蒼:「じゃあ、行こうか」


そう言って、手を握りしめられる。戻ってきたんだ。僕も、優しく握り返した。


理一:「あ、そう


そう:「何?」


理一:「今日は、どこに行くんだっけ?」


蒼:「結婚式の打ち合わせだよ!水がかかって忘れちゃった?」


理一:「ごめんね」


蒼:「いや、いいんだ」


そう言って、蒼は笑ってる。


幸せ


幸せ


幸せしかない世界に、僕は産み落とされた。



蒼:「じゃあ、理々花。待ってるから」


僕の家についた。


理一:「うん!すぐに着替えてくる」


僕は、家に入る。母さんも父さんも理乃も…。別世界(こっち)のは、別人。


母:「あらー、どうしたの?忘れ物」


理一:「濡れちゃって、着替えに来た」


母:「そうだったの!大丈夫?」


理一:「大丈夫、大丈夫」


僕は、ニコっと笑って部屋に行く。母さんなのに、母さんじゃないんだ。部屋に入って、クローゼットから服を探す。


これにしよう。薄いピンク色のサラサラとした生地のワンピースを手に取った。僕は、姿見を見つけた。その前で、僕を見る。黒髪のサラサラのストレートロングだ。僕が憧れた僕がいる。蒼に貸して貰ったシャツは、ワンピースみたいになってる。


理一:「ただいま」


僕は、鏡に触れて泣いていた。何もかもを捨ててきた。でも、その価値は充分あった。机の上をチラリと見ると、手紙と指輪が置いてあった。


理一:「ちゃんと持ってこれたんだ」


僕は、母さんに貰った指輪を薬指にはめる。


理一:「ピッタリだよ!母さん」


ワンピースを着替えて、家を出る。


理一:「行ってきます」


母:「行ってらっしゃい」


僕は、今にも踊り出しそうな気持ちを押さえて家を飛び出した。


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