お別れだよ

僕は、母さんと父さんに手紙を書いた。蒼が、戻ってくるまでに、この場所せかいから僕はいなくなりたかった。一刻も早くいなくなりたかった。母さんに貰った指輪をはめる。薬指の途中で止まっちゃった。手紙を持っていって向こうで読もう。じゃあ、行こうかな!僕は、いったん部屋を出て父さんと母さんの寝室に手紙を置いてから戻ってくる。


じゃあ、行こう。いつの間にか直ってるオルゴールのネジを巻いて音楽を鳴らす。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪


その間に、ベッドに横になった。


理一:「さよなら、蒼。僕は、蒼を愛していた。誰よりも愛していた。蒼とずっと一緒にいたかった。蒼、どうか花岡さんと幸せでいて…。僕は、蒼が結婚なんてしたらきっと死にたくなるんだ。妥協して、誰かに恋をする事も…。誰かと付き合う事も…。誰かとキスする事も…。僕には、出来ない。ごめんね、蒼。今まで、ありがとう。幸せだったよ」


涙で視界がボヤボヤとぼやけてくる。僕は、ゆっくりと目を閉じた。


理一:「母さん、父さん、僕をこの世界に産んでくれてありがとう。理乃、素敵な大人になるんだよ」


ぐにゃりと視界が変形した気がする。不思議。目を閉じてるのに、鮮やかな色彩を感じる。やっと抜け出せる。悲しくて辛くて痛いだけだったこの場所(せかい)から…。


僕は、旅立つんだ。


蒼の人生を見届けるなんて嫌だ。僕には、出来やしない。


誰かの声:「り…、り…、り…」


ベッドに吸い込まれてくような感覚がする。


危ない、落ちちゃう。


落ちちゃうよーー。


僕は、しがみつこうとするけど両手が動きそうにない。


僕は、ビルの屋上に立ってる。


何で?


怖い、怖い。


ドンッ…。


誰かに背中を押されて、まっ逆さまに落ちてく。


やめて、死んじゃう。


死んじゃうよーー。


死にたくないよーー。


ギリギリで、止まった。まるで、昔見た何かの映画みたいだ。


ビューーと、突風が吹いて僕の体は横向きに流されてく。


理一:「何?わぁぁぁ」


その風に引っ張られてく。


怖い


怖い


怖い


何?


何?


何?


頭の中が、ぐちゃぐちゃしてる。


考えは、纏まらない。


僕は、ただ何処かに流されている。


理一:「危ない」


気づいたら、僕は断崖絶壁にいた。


理一:「また?嫌だよ」


ドンッ…


また、背中を押される。


嫌だ


嫌だ


嫌だ


もう、目をギュッと瞑る。


見たくない


見たくない


見たくない


理一:「わぁーー」


バシャン……


えっ?


女の人:「あー、ごめんなさい。誰もいないと思って」


蒼:「さっきから何度も名前呼んだのに聞こえないみたいな顔しちゃって」


僕は、その顔を見てヘナヘナとその場に座り込んだ。



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