父の想い
【お風呂が、沸きました】
父:「沸いたなー。体を洗って入るか」
理一:「うん」
父さんは、体を洗って湯船に浸かった。僕も体を洗って湯船に浸かる。
父:「昔は、大きいねって理一が喜んでくれたお風呂も今じゃ狭いなー」
理一:「そうだね」
父さんと僕は、並んで湯船に浸かっていた。そして、父さんは、前だけを見つめながら話しだした。
父:「理一、父さんの会社の別の部署にな!まだ、手術をしてないけど女の子の格好をしてる人がいるんだ」
理一:「うん」
父:「その子が、トイレを女子トイレでしたいと言って大問題になった」
理一:「うん」
父:「アンケートが回ってきて父さんは、女子トイレを使ってもいいって丸したんだけどなー。ダメだった」
理一:「どうなったの、その人」
父:「男子トイレを泣きながら使ってるって聞いた!」
理一:「そうなんだね」
父さんは、僕の悲し気な声に気づいたようだった。
父:「理一、この世の中はな!まだ、理一のような人が生きていくのは大変なんだ。いいと言う人間がいる一方で、気持ち悪いと否定する人間がいる。残念ながら、理一のような人を否定する人間の方が世の中には圧倒的に多いのが事実なんだ」
僕が父さんの方を見るとは、父さんは涙を流している。
父:「悔しいなー。理一は、好きでそうなったわけじゃないし。母さんも、理一を苦しませる為にこの世界に産んだわけじゃないのになー。父さんだって、理一が幸せになる事だけを願ってきたんだ」
父さんの頬を涙が濡らしている。僕は、父さんの手を握りしめる。
父:「理一、ごめんな。女の子にしてやれなくて…。ごめんな。こんな世界に産まれさせて」
理一:「ううん」
父:「父さんの願いは、な!理一が、笑って過ごせる日が、1日でも多くあればいいと思ってる。それと、生きたいって思える日も1日でも多くあればいいと思っている」
父さんは、僕の手を力強く握りしめる。
父:「
理一:「父さん、ごめんなさい。僕、今になって愛されてるって気づいて」
父:「人間はな!失うってわかって初めて気づく生き物なんだ。愛されてた事にも愛していた事にも…」
理一:「父さん……」
父さんは、ただ前だけを見つめている。
父:「背中洗ってもらおうかな」
そう言って、湯船から上がって風呂椅子に腰かけた。
理一:「ごめんなさい」
父:「謝るな!理一。これからは、自分が信じた道を進みなさい。蒼君と結婚出来る
理一:「はい」
父さんの肩が震えてるのがわかる。凄く泣いているんだ。僕は、気づかないフリをしながら背中を洗った。
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