父の帰宅
理一:「母さん、僕。明日には、向こうに行くね」
母:「はい」
理一:「今日は、皆で過ごそうね」
母:「わかってたから、母さん、父さんに理一が大好きな!Shell《シェル》のショートケーキ頼んだのよ」
Shellは、僕が大好きなケーキ屋さんだ。ここのイチゴのショートケーキが僕は大好きだった。
母:「理一、母さん。お手紙書くから、向こうで寂しくなったら読んでくれる?」
理一:「うん。僕も書くよ」
母さんは、シチューの火を止めて僕を見つめる。
母:「理一のお母さんになれてよかった。ありがとう」
理一:「母さん、僕、探すからね!母さんの友達」
母:「うん」
理乃:「二人で何してるの?」
母:「あー、理乃。お兄ちゃんにごめんなさいしなさい」
理乃:「オルゴール壊して、ごめんなさい」
理一:「いいんだ!もう」
僕は、理乃の頭を撫でる。
理乃:「何か、お兄ちゃん怖い!いなくなっちゃうみたい」
理一:「そんなわけないだろ」
理乃:「本当に?本当に本当にいなくならない?」
理一:「ならないよ」
理乃:「じゃあ、理乃と約束して」
約束をしようとしたら、母さんが理乃を止める。
母:「理乃、宿題やったの?」
理乃:「あー、まだ」
母:「早くやりなさい」
理乃:「はーい」
理乃は、バタバタと二階に上がって行った。
理一:「母さん」
母:「出来ない約束は、しないの!理一。わかった?」
理一:「うん、ごめんなさい」
母:「それと、蒼君にちゃんとお別れしなさいよ!わかった?」
理一:「わかってる」
そう言って、母さんはキッチンで料理を作りに行く。
父:「ただいまー」
理一:「お帰りなさい」
父:「理一」
父さんは、帰宅と同時に僕を抱き締める。
理一:「どうしたの?父さん」
父:「どっか行くんだろ?ホールケーキなんか、誕生日でもないのに買わないだろ!普通」
理一:「父さん、行かないよ」
父:「蒼君とそっちなら、結ばれるのか?」
理一:「何言ってるの?」
父:「理一の事は、ずっと見てきたから知ってる。蒼君が、ずっと好きだっただろ?嘘はつかなくていい」
理一:「そんなわけないよ」
父:「男が好きなのは、恥ずかしい事なんかじゃないんだよ!だから、父さんに嘘をつかないでいい」
僕は、こんなに優しい愛情を持ち合わせている家族を捨てるんだ。罪悪感で、胸が痛みだした。
父:「理一、本当の事を言っていいんだよ」
理一:「父さん、ごめんなさい。僕は、蒼を選びたいんです。向こうに行けば、僕は蒼と結婚出来るから」
ボロボロと涙を流す僕の顔を父さんは、覗き込んだ。
父:「そうか!そっちなら、結婚出来るのか!よかったな!理一」
その涙を大きな掌が拭ってくれる。僕は、親不孝ものだ!男を好きになっただけじゃない。家族も捨てるんだ。こんなに愛してくれてる家族を…。
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