母さんからのプレゼント

母:「泣いてたら、父さんにおかしいと思われちゃうわ」


そう言って、母さんは僕の背中をポンポンと叩いた。


母:「あっ!ちょっと待ってて」


そう言って、母さんはキッチンから離れて何処かに行った。暫くして、戻ってくる。


母:「持っていけるかは、知らないけど…。これ、理一が結婚する人が見つかったら渡そうと思ってたの」


そう言って、母さんは青色の指輪を僕の手に乗っける。


理一:「これ、何?」


母:「母さんのお母さんのお母さんから、代々受け継がれてきた婚約指輪!理乃には、父さんのお母さんのお母さんから受け継がれてきたのを渡すって決めてたから!だから、これは理一のお嫁さんに渡すつもりだった」


理一:「母さん、僕…」


母:「わかってる。だから、これは理一に渡すの」


理一:「ごめんね」


母:「何謝ってんの!この石はね、サファイアって言うのよ」


そう言って、母さんは泣きながら笑ってる。


母:「青色はね!揺るぎない心の象徴だと言われててね。誠実で一途な愛などの意味があるんだって!母さん、蒼君を想う理一にピッタリだなーってずっと思ってたの!」


そう言って、ニコニコ笑って頭を撫でてくれる。


理一:「いつから、僕がそっちだって知ってたの?」


母:「スカーフを泣きながらねだった時から!おやおや?この子は、何か違うぞってね。でも、理一が自分から言うまで黙ってようって思ったの」


理一:「母さん、ごめんなさい」


母:「だから、謝らないの!蒼君と、向こうでうまく行くなら母さんに写真送ってよ。って、無理よね」


母さんは、涙を拭ってシチューの鍋に向き合った。


母:「最後にたくさん笑ってから、向こうに行きなさいよ!母さん、理一じゃない、理一と一生過ごさなきゃいけないんだから!父さんも理乃もよ!だから、今日だけは楽しんで過ごしてよ」


僕は、母さんを見つめていた。その背中は、泣いてるから震えてる。僕は、母さんがくれた指輪を見つめる。


蒼を想う僕にピッタリだと言ってくれた。母さんは、ずっと僕を見守ってくれていたんだ。

僕は、母さんに後ろから抱きついた。


母:「昔から、理一はそれが好きだねー」


理一:「母さん、どこにいても、僕は母さんを愛してるから!忘れないでね」


母:「うん!母さんも、理一を愛してるよ」


理一:「母さん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」


母:「理一が、その世界で蒼君の隣で幸せに笑ってるだけで母さんは幸せだから!父さんも母さんも、理一が産まれた時から理一の幸せだけを願っていたから…。だから、ちゃんと向こうで幸せになりなさいよ」


そう言って、母さんは僕の手を握ってくれる。僕の心残りは、もうなくなった。


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