壊れたオルゴール
僕は、手の中にあるオルゴールを見つめていた。
理一:「どうしたら、こんな風になるんだよ」
ネジ巻きの部分が、完全に折れていた。さっき、母さんが触っていたからそのせいだ。
コンコンー
二階の窓ガラスが、叩かれた。
理一:「はい」
僕は、躊躇わずに窓を開ける。
蒼:「泥棒なら、殺されてるよ!りっくん、もっと警戒しなきゃ!」
理一:「なら、玄関から来いよ」
蒼:「都会は、近いからいいよね!窓から、隣がこんにちはだよ!そして、部屋にも入ってこれる」
そう言って、蒼は僕の部屋に入ってきた。戸建てで、隣同士の僕達は大きくなってからは互いの家をこうやって行き来していた。
蒼:「何それ?」
手に持ってるオルゴールを指差される。
理一:「何でもない」
僕は、とっさにそれを布団の中に隠した。
蒼:「そう」
蒼は、気にしないフリをして僕を見つめる。
蒼:「何で、昨日帰ったんだよ」
昨日……?僕が、帰ったのは今日だ!
蒼:「りっくん、聞いてる?」
理一:「えっ、ああ!昨日だっけ?」
ポリポリと僕が、頭を掻くと蒼はスマホを見せてきた。
蒼:「ほら、昨日だよ」
本当だ!昨日だ!
蒼:「俺が、花岡さんにいいよって言ったのが嫌だったの?」
蒼は、僕に近づいてきて顔を見つめてくる。まるで、キスされそうだ。
理一:「だって、断るって」
蒼:「やっぱり、付き合うよ!俺、花岡さんを大切にしたいんだ」
理一:「そう」
泣くな!泣くな!僕…。
蒼:「好きになれるかは、わからないけど…。花岡さんと色んな事してみたいと思ったんだ。手を繋いだり、キスしたり、その先だって!花岡さんとならしてみたいって思ったんだ」
わざわざ、そんな事を言いに来たのか?
理一:「いいんじゃない!蒼が、そう思うなら」
蒼:「ありがとう、りっくん」
蒼に手を握られて、ドキドキする。
蒼:「昨日さ!小田が!長谷部に告白されたんだ」
理一:「えっ?」
蒼:「世の中が、認め始めてるからって、堂々と告白なんかして気持ち悪いよな」
理一:「蒼が、そう思ったの?」
蒼:「うん!思ったよ!気持ち悪いなーって、だって長谷部男だよ!でさ、小田もキモイから近寄んなって言ったらしい。幼馴染みで、同じ野球部で、仲良かったのにさー。りっくんは、俺を好きとかないよね?」
その冷たい視線に、バレちゃいけないのを感じた。
理一:「あるわけないだろ」
蒼:「だよなー。よかった」
蒼は、ホッとした顔で笑った。
蒼:「あっ!月曜日からは、ちゃんと来いよ」
理一:「わかってる」
蒼:「りっくん」
そう言って、突然蒼の顔が近づいてきた。
蒼:「何か髪の毛に花びらついてた!はい」
そう言って、手にピンク色の花びらを渡された。
蒼:「じゃあ、帰るわ」
蒼は、そう言って部屋から出ていった。
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