元の世界

帰宅

田宮さんと別れて、僕はもと来た道をトボトボと帰っていた。


蒼:「FLOWERLilyに行ってたの?」


理一:「そう!!」


僕は、驚いて蒼を見つめていた。


蒼:「そんなに驚く事かな?」


理一:「ねぇー、ねぇー、とかないから」


蒼:「いつもじゃないか!」


理一:「あっ、そうだったね。ハハハ」


僕は、そう言って笑った。この世界では、蒼は天パだ!向こうでは、さらさらのストレートヘアなのに…。


蒼:「何かついてる?」


理一:「ううん」


蒼:「そっ!なら、いいんだけど」


そう言って、蒼は眉毛を撫でている。


蒼:「何?幽霊でも見た?」


理一:「ううん」


不思議だ!名前も、名字もかわって、容姿も多少かわってる。なのに、蒼なのが不思議だ。緊張すると眉毛を撫でる仕草も蒼だ。


蒼:「あー、呼び出し!父さんから!じゃあ、行くよ」


理一:「うん」


蒼:「り…理々花」


理一:「何?」


蒼:「また、明日な」


理一:「うん」


蒼は、手を振って帰って行った。やっぱり、僕はここにいたい。迷うわけない。だって、この世界の方が幸せなんだから…。なのに、どうして?思い出すのは、あっちの蒼なんだろうか?


【♪♪♪♪♪♪】


耳元で、何かが聞こえ始める。


待って、これってさっき聞いたオルゴールの音色?


目の前の視界が、ぐにゃりと変形する。


蒼:「だから、聞いてる?」


これって…。


まるで、走馬灯のように映像が現れる。


蒼:「やめてくれよ!気持ち悪い!男が好きとか無理だよ」


これは、何?こんなのは、知らない…。


蒼:「まさか、りっくんって俺が好きなの?そんなはずないよな?」


待って、やっぱり帰りたくない。


蒼:「うわー。ないよ!気持ち悪い」


やめて、蒼。これ以上、言わないで。


蒼:「りっくん、俺。花岡さんとキスしちゃった」


涙が零れ落ちる。


視界は、さっきより変形する。


蒼:「りっっくぅぅぅん、おっれっっ」


スローモーションになってる。蒼の動きがゆっくりだ。


鮮やかに彩られた色彩の町並みが、どんどんと黒に近づいてる。


【♪♪♪♪♪】


さっきより、オルゴールの音が大きくなる。


僕は、ギュット目を瞑った。


◆◆◆◆◆◆◆


ゆっくり目を開けると、見慣れた天井だった。


理一:「嘘」


起き上がった。


母:「何だ、起きたの?」


理一:「何で、部屋にいるの?」


母:「理乃が、何か理一の部屋から持ってきたのわかったから取り上げて、戻しにきたのよ!はい」


そう言って、母さんはハート型のオルゴールを渡してきた。


理一:「壊したの?母さん」


母:「母さんが、壊すわけないでしょ!最初から、こうだったわよ」


理一:「ふざけんな!出ていけよ」


母:「理一、どうしたの?」


僕は、母さんを部屋から追い出した。


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