焦らないで

僕は、クッキーの缶から白いチョコレートののってるのを貰って食べる。


田宮:「焦らないで、いいから!ゆっくり考えた方がいいよ」


理一:「あの、ここって何ですか?僕は、死んだんですか?」


田宮さんは、僕の言葉にクスクス笑った。


田宮:「君は死んでないよ!生きてる。ただ、この世界はあっちとは違う。パラレルワールドとか異世界とかって聞いた事ある?」


理一:「それって、ドラマや映画やゲームやアニメの話ですよね」


田宮:「フフフ、そうだね!向こうでは、そうだと思う」


そう言って、田宮さんは笑いながら珈琲を飲む。


理一:「じゃあ、ここって」


田宮:「今まで、君がいた世界とは別の世界だよ!君が言った通り、作り物の世界で表現される場所だよ」


理一:「それじゃあ、僕って」


田宮:「まだ、姿見てなかった?」


理一:「はい」


田宮さんは、驚いた顔をして僕を立たせて連れて行く。大きな姿見に、この世界の僕が映し出される。


理一:「わあー。綺麗だ」


田宮:「凄く綺麗だよ」


田宮さんは、ニコニコ笑ってくれる。あっちでの僕は、少し天パぎみの髪の毛をしていた。でも、この世界の僕はストレートロングだ。薄目の唇も、小ぶりながら女性らしいぷっくりしたものに変わっている。薄い二重でありながら大きな目で小ぶりな鼻も変わっている。パッチリした二重に大きな目、少しだけ鼻先が丸みを帯びてる。凄く可愛らしい女の子だ。

あのコスモス畑の映像では、よく見えなかったけれど…。この姿なら、花岡さんにだって負けていない。


理一:「向こうの蒼に見せてやりたいぐらいだ」


田宮:「見せてどうするの?」


理一:「付き合えるか聞いてやりたい」


僕は、そう言って笑った。


田宮:「そうだ!君の名前を聞いてなかったね」


理一:「理一です」


田宮:「この世界の名前だよ」


理一:「あー、理々花って言うらしいです」


田宮:「素敵な名前だね!今の君にピッタリな名前だよ」


田宮さんは、そう言って僕の頭を撫でてくれる。


お客様:「すみません」


田宮:「はーい。ちょっと待ってて」


理一:「今日は、帰ります」


田宮:「そう?ごめんね」


理一:「いえ」


田宮:「あっ!待って」


そう言うと、田宮さんは僕の手に紙を握らせる。


田宮:「理々花ちゃんの答えが決まったら、連絡して」


そう言って、お店に行ってしまった。渡されたのは、名刺だった。田宮海花と書かれていた。僕は、それをポケットにしまって田宮さんのお店を後にした。


向こうの世界の蒼と別れるのは、確かに寂しい。でも…。

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