田宮さんの話
田宮さんは、珈琲を飲みながら柔らかく笑う。
田宮:「私も君のように泣いていたの。雅人が結婚した事が悲しくて。そして、子供まで産まれちゃったら…。さらに悲しかった」
理一:「わかります」
僕だって、蒼がそうなったら嫌だ。
田宮:「でもね、あっちでは…。どう頑張っても、私は男だった。だから、あのオルゴールをもらってこっちに来れた時は嬉しかったわ」
そう言って、ニコニコ笑ってる。
田宮:「でもね、他のものは捨てなくちゃいけないの。君に出来る?」
理一:「捨てるって?」
田宮:「家族とか友達とか…。この世界に君が来たら、向こうの世界の君はこの世界の君と変わるんだよ!捨てられないなら、帰るべきだよ」
理一:「それって、こっちの僕が、今は向こうにいるって事?」
田宮さんは、コクリと頷いた。
理一:「って事は、向こうで僕は僕のままでいなくなってはいないって事?」
田宮:「そうなるね」
理一:「それは、何かよかったです」
田宮:「よかった?」
理一:「はい!いなくなっちゃうのかと思ってたから」
僕の言葉に、田宮さんはクスクス笑った。
田宮:「いなくは、ならないよ!こっちの君があっちに行くだけだから…。でもね、こっちを選択したらもう二度とあっちには戻れない。だから、私も悩んだの!雅人(まさひと)と離れたくなくてね」
そう言って、田宮さんは立ち上がってクッキーを取ってやってきた。
田宮:「たくさんの想い出を作ったのは、雅人だったから…。でもね、向こうにいる限り。私は、彼にとってただの友達なの。それは、一生…死ぬまで続く地獄」
理一:「地獄ですか?」
田宮さんは、缶のクッキーを開けてチョコレートののってるクッキーを取り出して食べてる。
田宮:「
そう言って、悲しそうに目を伏せる。
田宮:「雅人といると地獄だった。好きだし愛してるのに、いつかバレて「キモー」って言われる気がして怯えていた」
それは、僕にもわかる。いつか、蒼に気持ち悪いって言われるんじゃないかって思ってビクビクしてる。
田宮:「でもね!
そう言って、田宮さんは笑っている。
理一:「僕も、ここにいたいです。この世界線であおと…。違う、
田宮:「早く決めちゃ駄目だよ!向こうに帰って、もう一度ゆっくり考えないと後悔しちゃうよ」
田宮さんは、僕にクッキーを差し出してくれる。
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