出会い

おばあさん

お婆さん:「よう、泣け、泣け」


理一:「すみません」


フラフラと公園にやってきた僕の背中を白髪のおばあさんが擦ってくれる。


おばあさん:「むせび泣く程、恋しいもんがおるんか?」


理一:「はい?」


よく聞こえなくて、僕はおばあさんにもう一度尋ねていた。


おばあさん:「だから、そんだけ泣く程。好きなもんがおるんか?って聞いとる」


僕は、その言葉に頷いた。


理一:「世界が…ううん。性別がひっくり返らない限り。僕が付き合うのは無理です」


おばあさんは、僕をジッーと見つめる。


おばあさん:「ほうかぁ。おなごにとられたんか?」


僕は、おばあさんの言葉に目を伏せる。


おばあさん:「気持ち悪い言われたんか?」


僕は、その言葉に驚いて目をパチクリさせた。


おばあさん:「全部、見えとるよ」


そう言って、おばあさんは僕の手を握った。


おばあさん:「好きになったんは、あんたが先やったんやなー」


さっきとは、違っておばあさんは関西弁になった。


理一:「夢ですか?」


おばあさんだと思っていた筈のその人は、いっきに若返った。


おばあさん:「夢やないよ」


理一:「手品?マジック?」


おばあさん:「それも、ちゃうわ」


理一:「じゃあ、何ですか?」


驚きを通り越して、今はこの人は、僕の恐怖の対象だった。


おばあさん:「何やの!そんなお化けでも見たような目させて」


理一:「だって」


おばあさん:「あんたが、うちの世界に来ただけやないの」


僕は、その言葉に固まった。


おばあさん:「阿呆みたいに口を開けとらんと、閉じなさい」


そう言って、肩を叩かれる。


理一:「いたっ」


80歳は越えてると思っていたおばあさんは、今はどう見たって、僕の母よりも若い。


理一:「死んだのかな?」


女の人:「死んでへんよ!」


女の人は、そう言って微笑みながら僕に何かを差し出した。


理一:「何ですか?これ?」


女の人:「あんたの願いが叶うものや」


理一:「僕の願い?」


女の人:「せや」


理一:「どんな世界に行ったって無理なんです」


僕の言葉に女の人は、お腹を抱えながら笑いだした。


理一:「何も可笑しい事………」


僕は、開いた口を閉じれずにパクパクしていた。


女の人:「だから、阿呆みたいな顔すんのやめろや」


そう言った声は、少しだけ低くて…。どう見たって女の人はおじさんだった。


理一:「わかった!夢だ」


僕は、ギュッと目を瞑った。きっちり30秒を数えて目を開く。


理一:「何で?おかしいなー」


もう一度やる。


理一:「待って変だ」


もう一度やる。


理一:「あれ?おかしいなー」


またやった!


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