第14話 これが、“ちゅき”、か……。
「威厳が溢れる……、お前が好きだったのに……」
「…………」
ん?
「威厳が溢れる……、お前と戦うのが……、生き甲斐だったのに……」
んん!?
「えっと、ガザムさん。エルフの王様って……」
「ああ、あいつか。女だぞ」
「女性ー!? 整った中性的なお顔なのでっ、男性だと思っていましたー!」
「よく間違われる……」
「はひぃー! さらにすいませーん!」
「全くだ! 威厳がないガザムなど! ガザムではない!」
両腿を叩き、髪を振り乱しながら、言い切ったエルフの王様。なんだか、すごく申し訳なくなってきた……。
でも、私だってガザムさんが、大好き、ううん、だいちゅきだ。だから。
「ガザムさん、下ろしてくれますか?」
「ああ」
ガザムさんは私をそっと下ろしてくれた。
エルフの王様に近づき、しゃがんで目線を合わせる。
「えっと、王様」
「エレクトだ……」
「エレクトさん」
「何だ……」
「まずは、ガザムさんを好きになってくださり、ありがとうございます」
私はエレクトさんの両手を握った。
「は?」
「おかしいでしょうか?」
「おかしいだろう、何故、礼を言うのだ」
「ガザムさんは、私の旦那様で、だいちゅきな人です」
「お前も訳のわからない“ちゅき”を使うのか……」
「訳はわからなくないですよ。“ちゅき”ってすごいんです。“好き”よりもなんだか恥ずかしいのに、もらえる元気は多いんです」
だから、私は少しずつ前を向けて、自分を好きになれた。
「好き、よりもか……」
「はい。だいちゅきなガザムさんをちゅきになってくれて、ありがとうございます。そして、ごめんなさい。
私もエレクトさんと同じくらい、ううん。エレクトさんよりも、ガザムさんがだいちゅきで、結婚しました。なので、旦那様を渡すわけにはいきません」
「…………」
静かに、ゆっくり、エレクトさんが項垂れていく。
「ですが」
握っている手に力を込めた。
「ガザムさんをずっと想い続けてくれた。そんな一途で熱い気持ちを持っているエレクトさんなら。ガザムさんと同じくらい、素敵な旦那様に出会えます」
「同じくらい、か……?」
「“同じくらい”、です。ガザムさん以上、と、言おうと思いましたが、私にとっての世界一は、ガザムさんなので」
照れ臭くなって、「えへへ」と笑った。
「いいものだろう! これが“ちゅき”だ!」
「わぁっ!」
ガザムさんに後ろから抱き締められた。
「イチャイチャしおって……」
「ちゅまとイチャイチャして何が悪い!」
「暑苦しいのだ……」
「なんか、すいません」
「暑苦しいのに……、腹立たしいのに……、こっちまで幸せな気持ちになってくるのは、何故だ……」
「それが“ちゅき“だからだ!」
「これが“ちゅき“、か……」
エレクトさんは顔を上げ、ふっと寂しそうにでも優しく微笑んだ。
「……わかった」
「え?」
「和平を結ぼう」
「本当ですか!?」
「ああ……。我々エルフは、今後一切、オークと争わないと誓おう」
「ありがとうございますっ。あと、エレクトさん」
「何だ……」
「私は人間代表ではありませんが、戻ったらみんなに話してみます! エルフと領土の事で争わなように!」
「ああ……、そうしてくれ」
「なので、最後に一つ、教えてください」
「何だ……」
「エルフと手を組み、ガザムさんに呪いをかけた人間は、誰ですか?」
●●●●
あとがき。
次回、私恒例、私恒例? ……私恒例でいいや(おい)一気にシリアス回です。
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