第10話 確かめに行きませんか?

「喜んでもらえて何よりだ! さぁ!」


 がしっと横腹を掴まれ、


「わぁっ!」


 そのまま担がれた。


「俺たちの“ちゅき”を全種族に見せつけてやるのだー!」


「うおぉー!」


 オークさんたちの雄叫びが響き渡った。だけど、皆さん“ちゅき”の意味わかってないよね……。






 こうして、ガザムさんが隣に座り巨大担架のようなものに乗せられ、移動している。

 二百人越えのオークさんが手に松明たいまつを持ちながら、私たちを囲み、「王だぞ!」「王の嫁だぞ!」「見るな!」「見ろ!」「散れ!」「集まれ!」と、言いながら進んでいく。


 私の故郷をはじめ、あらゆる町の人々が何事かと見に来て、「あれが黒聖女サン・ノワールか」と、呟いているのが聞こえる。


 不吉の象徴のような、黒聖女サン・ノワールの花嫁行列は、人々からすれば、大災害と同じようなもんなんだろうな……。


「わはは! 皆がお前を見ているぞ! 本当なら見せたくはないが! 今だけは見るがよい!」


「——……」


 人々の視線は、冷たいものなのに、ガザムさんがいるだけで、あったかいものに変わる。


 本当に、この人を助けられてよかった。黒聖女サン・ノワールでよかった。じゃなきゃ、呪いは解けなかった。呪い……。


「……ガザムさん、こんな時にあれなのですが」


「何だ! どんな時でも! 何でも言うがよい!」


「はいっ、ありがとうございます。エルフさんは、弓矢と魔法が得意な種族だと聞いています。呪いを、呪術を使うなんて聞いたことがありません」


「うむ、それなんだがな。俺も気になっていた」


 楽しそうに笑っていたガザムさんに、真剣さが宿り、声が落ち着いたものになった。


「呪いをかけられ、意識を手放す寸前、人影を見た。あれはエルフではなかった、人間だった」


「人間……。実は、その人に心当たりがあるんです」


「ほぉ」


「だから……、確かめに行きませんか? エルフの里へ」





●●●


 あとがき。


 次回、新章、エルフの里にて『威厳? 知らない子ですね』編です(笑)

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