第4話 世界をちゅきで包むのだ!

「何を恥ずかしがっている! 好きになるのは素晴らしいことだぞ!」


「それはわかりますが……。そもそも、ガザムさんは、私のどこを好きになってくれたんですか……?」


「全部だ!」


 聞かなきゃよかったー!


「だがそれでは、納得いかぬだろう。全部だが、一番はな!」


「は、はいぃ……」


「呪いでうなされている時、悪夢ばかり見ていた。息苦しさ、圧迫感、黒く長い虫が体を蝕むような気持ち悪さ。このまま死ぬんだと思っていた」


「はい……」


「そんな時、体がすうーっと軽くなっていくのを感じた。久々に目を開けた先に見えたのは、べそをかいている顔のお前だった」


「はい……」


「可愛いと思った!」


「……はい?」


「一目惚れだ!」


「はいぃ!?」


「好きでは収まらないこの気持ちは何だと考えた! そう! ちゅきだ!」


「…………」


 だからっ、ちゅきって何ですかー!?


「俺はお前のことをちゅきだということを! 誇りに思い! 皆に伝えたい! メヒアがちゅきだと!」


 両手を広げ、空に向かって掲げたガザムさん。


「そして! お前をちゅきになり気づいた!

我々オーク含め、どの種族も! 醜いだ、乱暴だ、意見が合わないだ、何かしら嫌う訳をわざわざ見つけ争っていると!」


「…………」


 確かにそうかもしれない。


 気性が荒い、闘争を好むからと、エルフはオークを嫌っている。

 オークは、エルフを堕落させたもの、エルフや人間を真似て作り上げた存在。なんていわれている。だから、私のような人間や、エルフを憎んでいる。

 エルフに対する憎しみは、私たち人間より強いと思う。


 これらのことにより、エルフとオークの闘争は遥か昔から続いている。


 終わりが見えない、長く悲しい戦い。


「どの種族も欠点はある! だから! 嫌うなとは言わん! その倍、好きな所を! ちゅきな所を見つければ! わかり合える! そうは思わんか! メヒア!」


「——そうですね」


 私を奴隷として売り飛ばした家族も、わかり合いたい。だって、家族だもん。血の繋がった、家族だもん。

 お母さんもお父さんも、お姉ちゃんも。世界に一人しかいないんだもん。


 酷いとか思っちゃったけど、みんなが私を嫌いでも、私はみんなを、嫌いになんかなれないよー……。


「どうした! 何故泣く!」


 気がついたら、


「いえ……、ガザムさんの考え方、素敵だなと思って。大賛成です」


 涙が出ていた。


 物心ついた時から、黒は不吉だと、髪の毛を白く染められた。

 だけど、染まりにくい毛質みたいで、すぐに黒に戻った。

 白く染まっていた僅かな時、癒しの力を使えないと、怒鳴られた。余計に不吉だと。


 ガザムさんのおかげで、そんなことも忘れていた。だから、好きって、ううん、“ちゅき”って、すごいんだ。


「……うん、ガザムさん」


「何だ!」


「“ちゅき”で、みんなをあったかくしましょう」


「ああ! 世界を“ちゅき”で包むのだ!」

 



●●●●


 あとがき。


 書いてる私が大混乱です。どういうことよ、世界を“ちゅき”で包むって(笑)

 そして、どんどんガザムに、“ちゅき”に染まっていくメヒア(笑)

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