第6話


初めて打ったあの日諭吉が二人もあたしの財布に帰ってきた。

元々一人しかいなかったのに。

家に帰ってからはあの嬉しさにしばし酔いしれた。



「いらっしゃいませー」


仕事を初めて3か月が立とうとしている。

あたしはあの日からすっかりスロットの虜になり仕事が休みの時は他の店舗に良く足を運んだ。


「涼宮さん最近調子どう?」


仲良くしているおじいちゃんに話し掛けられた。

調子とは体のことではない。

ここでの調子はギャンブルのことだ。


「今のところ負けてないですよ」


あたしはちょい勝ちになった瞬間すぐにやめるのでトントンか勝ちかで今のところ済んでいる。


「それは凄い!俺なんて低貸しで5000円も負けちゃったよ!涼宮さんに打ち方習おうかな」


おじいちゃんはそう言い帰って行った。

低貸しとは玉やメダルを安く借りることだ。

なので負け額は少ないが大勝ちもしない。

逆に高貸しは高い分負け額もデカいが帰ってくるのも大きい。

初打ちはあたしも高貸しをしたが途中怖くなり今はずっと低貸し。


「5000円も負けるって絶対嫌だな!パチンコって恐ろしい」



次の日仕事が休みと言うことでマイホ(マイホーム)に行った。

あたしはスロットコーナーに向かおうとした瞬間突然話し掛けられた。

昨日のおじいちゃん、確か名前は星名(ほしな)さんだったかな。


「涼宮さんここで打ってたんだね」


何回もここに来てたのに星名さんに会うのは初めてだ。

すると星名さんが一緒に打とうと誘ってきたのだ。

悩んだがパチンコのことも知りたいし一回だけ。

負けたらスロットして取り戻せばいいや、そう思い星名さんと打つことにした。

やり方をパチンコ店員がお客様に教えて貰う。なんともシュールで月島さんのときも思ったが面白い。


貸出ボタンを押しいざ勝負。

あっという間に1000円を使い切る。

ちょっちょっと待ってよ!

これスロットよりもしかしてなくなるスピード早くない?

どんどんお金がなくなっていくのが怖くなってきた。

サンドに入れるたびに<戻ってこい、帰ってこい>そう心で叫んだ。


「星名さんパチンコって難しいですね」


あたしが苦笑いをしながら星名さんの方を向くと星名さんが画面、画面と言う。


「魚群だよ!よかったね」


ちょうど4000円使い切ったところに大量の魚が横を通過した。

そして同じ図柄が揃った。


「涼宮さんよかったね。ここからが本当の勝負だよ」


そう言う星名さんのところにも魚群が!二人して当たりを引けたのだ。

それからあっという間に使った額以上のものが帰ってきた。


「星名さん今日はありがとうございました。めちゃくちゃ楽しかったです」


スロットにはない興奮。

ボタンの振動や演出の派手さ。そしてスピード感。

全てに置いて楽しめた。

でも何が1番良いって楽なことだ。


「スロットも面白かったがパチンコの方が好きかも」


今日もニコニコしながら交換所へ向かい諭吉をお出迎えした。

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