第54話 色々思考が可笑しい艶魅様


「い、急ぐのじゃ眞銀! このままでは楓が! 楓がっ!!」


 ギュンギュンと風を切る様に飛ぶ艶魅。

 向かうは一刀達が向かった宮塚家だ。


 情報源は眞銀の護衛達から得ている。

 そして


「エムなる扉を開いてしまうのじゃ!」


 可笑しな情報も得ているのだった。

 いったいなぜそんな勘違いをしているのかというと


 一刀に捕まる楓→縄で縛られている情報も得る→その状態で宮塚家へ→宮塚家には少なからず一刀の部屋は用意されているだろうと予測→拘束されて動けない女子とその女子を自由にできる男が二人っきり→→→→→新たな扉が開かれる!?


 といった方程式が艶魅の中でできあがったようだ。


「へ、変な事、言わないで、ください! 楓は、普通で、正常な、子なので、すから!」


 そして眞銀は護衛の一人(女性)におんぶされながら宮塚家に向かっていた。

 流石に影宮家まで全力疾走を強いられたのに、そこから更に宮塚家まで全力疾走できるほどの体力は残っていないようだ。


「変なことでは無いのじゃ! マジモンのマジな話なのじゃよ! ええか眞銀。一刀の今までの態度を見て見よ。アレはどう見てもエスなる者じゃ。そして楓は我が強いように見えて元々の性格は内向的なのじゃ! 要するにエムの素質があったと言う訳じゃ! 更に影宮家現当主の重善は、よく妻の天城に縛られておるのじゃ! 娘は父によく似るとも言うし、やはり楓にはエムの素質が十二分に備わっておるのじゃよ!!」


「それ! 楓の前で! 絶対! 言わないでくださいよ!!」


「なぜじゃ!? 真実であろう!」


「真実じゃ! ないですよ!」


 艶魅のあまりのも残念な見解に、流石の眞銀も呆れ果てる。

 幸い艶魅の声は他の者達には届いていないが、もしも今の艶魅の声が聞こえていたら、神木神としての信仰は落ちていた事だろう。


「おぉ! やっと見えて来たのじゃ! 眞銀! 妾は一足先に一刀と楓の営みを見学しに・・・こほん、止めてくるのじゃよん!! 眞銀も早く混ざりに来るのじゃぞ!」


「神木神様! ここまで一緒に来たのに別々に別れたら意味ないじゃないですか!? それと趣旨が変わっていますし、お断りします!」


「眞銀! 主ならできる! というか主の場合は、なんだかんだその場の勢いや雰囲気で流される性格じゃからのぉ。じゃから楓のあひ~な状況を目の当たりにしながら、一刀に迫られれば、イヤでもあひ~な事を致してしまうじゃろうて」


「なりませんし! そう言う言い方は! やめてください!!」


 やるやらないなどの下ネタ的なネタはどうでもいいとして、なんだかんだ流されると言う眞銀の性格をよく知っている艶魅である。

 一刀がお墓参りに来た時も、なんだかんだ与えられたお菓子を食べて宴会に参加していたからな。


「のほほほほっ、恥ずかしがってからに。まったくあひ~くらいで恥ずかしがるとは、相変わらず初心じゃのぉ。まぁよい。では先に行くゆえ、さっさと来るのじゃぞ!」


「あ! 神木神様! まって!」


 眞銀の制止も届かず艶魅は壁をすり抜け、宮塚家のへと入っていった。

 一刀と楓が営んでいる部屋を探しに。(艶魅が勝手に勘違いしているだけです)


「もぉ! 神木神様! 勝手すぎ! ます!!」


 ぷんぷんと怒りながら、眞銀も急ぎ宮塚家へと入っていく。

 勿論勝手に入っていく艶魅とは違い、玄関から正式に挨拶をかわした後にである。


 そして少々時間をかけながら、宮塚家へとお邪魔した眞銀は一刀と楓がいる大広間へと案内された。

 もしかして艶魅が言った様に、本当に・・・こう・・・ヤバイ性癖の営みが行われていないか恐れながら、案内された大広間の扉を開け放った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る