第53話 駒を連れて
「・・・・何処に連れて行く気ですか」
一刀の命令に反論した楓と護衛達であったが、能力が進化し、異常な身体能力を手に入れた一刀の前では手も足も出せずに敗北し、手足や首を縄で縛られ引きずられていた。
楓は・・・まぁ、一応女の子として考慮されているのか、気絶するまで殴られていないので、今は渋々縄で縛られた状態で隣を歩いていた。
ああ、言っておくが、引きずられている護衛達は誰も殺されていない。
ただボコボコにぶん殴られただけだ。
殺さなかったのはひとえに一刀の気まぐれであるろう。
ちなみに護衛の中で一人だけ下着姿のモノがいるが、気にしてはいけない。
そんなあられもない格好にさせられた護衛の変わりに、一刀がちゃんと服を着ているが、気にしてはいけない。
「ほら着いたぞ」
「ここって・・なぜ宮塚家に来たのです? まさか文才様達を殺せと命じるつもりですか!?」
キッ! と睨みつけてくる楓。
こんな状態でも勝気な性格は成りを潜めないようだ。
というか忍びとして感情を表に出しすぎだな。
流石未熟者だ。
「アホ抜かすな。クソ野郎共を殺すのはこの俺だ。俺以外の誰にも野郎共を殺す権利は渡さねぇ」
俺は俺の手で終わらせる。
誰かに手助けされようとも、最終的にクソ共の心臓を握り潰すのは俺の仕事だ。
故にどれほど駒を得ようが俺の獲物を渡すわけがない。
「お帰りを心よりお待ち致しておりました。一刀様」
大きな扉に手をかけようとすると、扉が自然を開かれた。
初めてここに来た時のように、紫の着物に身を包んだ宮塚家の女達がずらりと勢ぞろいしていた。
相変わらず婆ちゃんの着ていた着物に似せている所が腹正しい。
「黙れ。黙ってクソ野郎の元へ案内しろ」
今まで楓に向けていた気配とは打って変わって、冷や汗が流れる程の冷たい声を一刀は発する。
怨みや怒りが込められたおどろおどろしい想いが込められた声が。
「・・・・・・」
そんな声は聞きなれていると思っていたのだが、やはりまじかでその声を聞かされるとどうしても、身体が震える。
けれど少し思う所はある。
こんな風に声を発する人だと言うのに、
「あん? おい、なに立ち止まってんだ。さっさと来いよ駒女」
「誰が駒女ですか。というか引っ張らないでください! 苦しいじゃないですか!!」
何故こちらに話しかける時は、宮塚家の人達に声をかけるように恐い声で声をかけて来ないのか、疑問に思う。
自分達の事も敵だと言っているのに・・・・。
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