第48話 気が付いたら白い部屋


「・・・・・あん?」


 目を覚ますと俺は真っ白なベッドの上に寝かされていた。

 周りの壁や天井も真っ白で、この部屋に入るための扉らしきモノも見当たらない。

 マジで密閉された空間って感じだ。


 しかし可笑しいな。

 俺は変なバケモンをぶん殴って、ぶっ殺して遊んでいたはずだ。

 そして逃げ出そうとするバケモンを引きずり出して殺し続けて・・・それからは・・・・


「記憶が飛んでやがるな。気絶でもしていたか?・・・つか、さっきからクソ最悪だな。こんな状態で気絶なんざできる訳もねぇ。なら精神的に疲れて寝ていただけか。たく、我ながら情けない限りだぜ。この程度で疲れちまうとはな。つか、通常でもこの状態が続くのかよ。マジで最悪だな」


 額に手を置きながら一刀はベッドから起き上がると、扉のない壁を殴る。


 脳のリミッターが無い状態で放った一撃は、一刀の腕を風船のようにはじけ飛ばし、周囲が真っ赤な血の色に染め上げたが、身体は一瞬にして再生するので全く問題なかった。

 勿論痛みは感じるが、慣れている為動じることはない。


「カテェし厚いな。まっ、この程度ならすぐにぶち壊せ「ちと目を離している隙に何をやっておるか! 馬鹿者ッ!!」・・・・ッチ」


 何処に行っていたのか知らないが、煩わしい艶魅が戻って来てしまった。

 一生どこかに消えていればいいモノを。


「こりゃ一刀! 主は相当ひどい怪我・・・は治っておるけど、三日も寝続けておったのじゃぞ! 少しは安静にしておらぬか!」


「三日も寝てただぁ? チッ、その間好き勝手にモルモットにされてたってことかよ。最悪だな」


 いったいどれだけ身体をもぎ取られたんだろうな。

 流石に数千体もホルマリン漬けにされている自分の身体なんて見たくねぇぞ。


「まぁいい。それよりいつまでもこんなところで油売ってられねぇな」


 文才の規格外の能力に対抗できる手段が思いも寄らぬところで手に入ったのだ。

 今の俺ならば、無数の斬撃をこの身に刻まれようとも、止まることなく突き進むことができる。

 そう思うと楽しみで仕方が無かった。


「くははっ! クソ楽しみだぜ! おらさっさと出しやがれ! おらおらおらおらっ!」


「じゃから暴れるなと言うに! ほれこっちじゃ! このボタンを押すと扉が開くようになっておるのじゃよ!」


「機械音痴の時代遅れの耄碌ババアがボタンとか言ってやがる・・・無理してんなぁ」


「妾とてボタンくらい知っておるわ!・・・・・・・って、誰が耄碌ババアじゃ!」


「おら出せって言ってんだ! おらおらっ! さっさと出さねぇとぶち壊しちまうぞおらっ!」


「もう何なのじゃこの馬鹿者は。少し見ぬ間に凶暴化しておるのじゃよ」


 全く艶魅の言葉を聞かずに、一刀は暴れ回る。

 壁を殴り、壁を蹴り、壁に頭突きし、血と肉と命を散らしながら暴れる。


 本当に凶暴化した獣のように―――――











 制御できない力に苦しむように。



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