第40話 いなくなって何かが起こった


 一刀に殺されかけた翌日、楓は父と母に一刀の捕縛を願い出た。

 勿論文才にも一刀を無理やり捕まえ、無理やり行為を致すことで、次代を担う子をはらむ話を通しており、文才も次代の子を授かるためならば相違なしと判断し許可を出していた。

 家の為になるのであれば、もはや倫理観など無いのだろう。


 そうして楓の願いと聞き入れられ、宮塚家から数人の手練れと、影宮家から数十人の手練れが集まり、一刀を捕縛する部隊が結成されることとなったのだが。

 いざ一刀の捕縛に動こうとしたときには、一刀の姿をくらませていた。

 まるでこちらの意図に気付いたかのように。




「いったいあの人は何処に行ったのですか!」


 一刀が姿をくらませて早一週間。

 街から逃げだしたのではと疑うほどに、一刀は見つからなかった。


「以前発見できていません。ただ街を出たと言う報告はされていませんので、依然としてこの街か森に潜んでいるのかと・・・」


「なら早く見つけなさい。こうしている間にもあの男が神木神様や眞銀様に危害を与えるかもしれないのですから」


「はっ!」


 忍び服に身を包んだ男は楓に頭を下げると、物音立てずに姿を消した。


「これだけ探し回っているのに何で見つけられないの。他の家にもあの男が姿を現したら報告をお願いしていると言うに・・・」


 イラついているのか楓は頻繁に親指と人差し指を擦り合わせる。

 どうやら楓はイラついていると貧乏ゆすりをするのではなく、指を擦り合わせる癖があるようだ。


「どこかの家が匿っている? いいえ、それは絶対にない」


 自分達四家と神月家の絆は血よりも濃い。

 現当主である文才様とパパが賛同してくれたのだ。(パパは血涙を流していたけど、それはどうでもいい)

 他の家にも了承は取るから頑張れと言ってくれたんだ。(パパは鬼の形相であったけど、それもどうでもいい)

 許可を得て動いている時点でどこかの家が裏切ったと考えること事態、彼等に失礼と言うモノ。


 けどだったらあの男は、一刀はどこに。


「街の中は探し尽くした。隠し通路も調べ上げた。森の中も調べ・・・・・」


 調べたと言葉を続けようとしたが、私は考え込む。


 森の中の捜索も確かにした。

 一番あの男の痕跡が残っている場所だったから捜索はした。

 けれど、優先的に調べさせたのは街の中であり、森の中の捜索は二の次にするように指示を出した。

 理由は私が動き出すまで色々準備が必要で三日たった後であったから。

 その間に森には真新しい痕跡はなく、森で生活をしている痕跡も無かったからだ。

 だから森にはいないと勝手に思い込んでいた。


「けどこれだけ街を探していないと言うことは、答えは森の中と言う可能性が高い。だけどいったい森のどこにいるの? 痕跡のあった場所は定期的に確認しているし、他の場所だって軽くではあるけど見て回って貰ってはいる。なのに足跡一つ残っていないから省いてたのに・・・・・残らない?・・・違う。探している場所が違うのかもしれない。私が調べさせているのは異形のモノが出てこない比較的安全な場所だけ・・・・・だから・・・もしかしたら・・・」


 あの男は結界内でも危険な場所に向かったのではないか?


「・・・誰かが場所を教えたなんて話聞いてないし、私達に敵対心を抱いている時点で教える訳がない。だって、教え!?」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 前触れもなく立っていられないほどの縦揺れの地震がおこり、その地震は一分ほど止んだ。


「こ、これって・・・」


 地震が止むと楓は外へと駆けだした。

 そして森へと視線を向けると一部の木々が枯れ果てており、艶魅のご神木でもある大樹も枯れていた。



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